ZENO

   光る物を耳に当て裸で「光を聴く少年」のジャケットが印象的だったZENO(ゼノではなくジーノと呼ばれています)というドイツのハードロックバンドについての書きのこしです。'80年代ロックアルバムの中でもわたしには特に印象に残ったジャケットカバーでした。そしてそこから出てきた音楽にも!


 ZENO(ジーノ)のバンド名はギターリストZeno Roth(ジーノ・ロート)からとられているのですが、ジーノの兄さんは(世界に飛び出そうとしていた時期の)スコーピオンズのリード・ギターリストUlrich Roth(ウルリッヒ・ロート) ---{スコーピオンズ脱退後辺りからUli Jon Roth(ウリ・ジョン・ロート)と表記される様になっていました}--- というド級兄弟です。
兄さんのウリ同様、ジミ・ヘンドリックスの影響を受けてギターを始めたそうです。
 1956年生まれのジーノが1960年生まれの Ule Winsomie Ritgen (ウレ・ウィンソミー・リトゲン)達と ドイツ・ハノファーにて'70年代に作ったバンド BLACK ANGEL が母体と成っています。 '80年代に入りジーノ(ギター)とウレ(ベース)はオリジナル曲の売り込みテープ製作にかかります。その際、ヴォーカルパートをMichael Flexig(マイケル・フレクシグ)に依頼したのですが、マイケルはそのまま正式メンバーと成っています。このデモテープはいくつかのレコード会社で評判になり、結構な額の契約金(4億円位?)にて英EMIが1984年に獲得しました。その翌年 '85年にデビュー・アルバム『ZENO』が完成、最初にシングル盤で"A Little More Love"発売され、'86年の春にデビュー・アルバムを発表しています。当時のHR/HMファンの間ではかなり話題になりロック中心の輸入レコード店では入り口付近目に付くところにおかれておりました。

 このZENOのデビュー・アルバム『ZENO』。この時期のジーノのギターはサウンドの要を担いながらも特に際だった特徴を感じなかったのですが、曲作りの力量はかなりの物で、叙情的で雄大さを感じる美しい旋律を持ち印象深い曲が多いです。9曲がジーノ作でウレが"A Little More Love","Emergency"の2曲を書いています。
 曲の良さと相まって私がこのアルバムが好きな理由はもう一点、マイケル・フレクシグのヴォーカルが異常に気に入ったからでもあります。彼のヴォーカルは高音がやたら金属的で人によっては耳障りにも感じるらしいのですが、私にとっては実に心地よい高音なのです。特に"A Little More Love"、"Signs on the Sky"などポップなメロに乗ったノビのあるハイトーンに酔えます。

 ZENOは'86〜'87年セカンドアルバム用のレコーディングを数曲していますが、'88年にはマイケル・フレクシグが脱退、代わりにTommy Heart(トミー・ハート)が参加、引き続きレコーディングを続けていましたが未完成のままで、ジーノが疲れたらしく1989年にバンドは解散の羽目に。(ここで、ZENOのメンバーだったウレ、トミー・ハートそしてレコーディングドラマーだったC.C. ベーレンズがFAIR WARNINGを結成します)

 '90年代に入り日本にゼロ・コーポレーションというヘビー・メタル主体に発売するレコード・レーベルが出来ました('99年に消滅)。そのゼロ・コーポレーションの提案で'93年にZENOの未発表音源の発表が決まります。ZENO解散後もジーノは数曲レコーディングしていたらしく'93年まで未発表だった彼の音源に新たに録音した曲('94年録音)と併せてセカンドアルバム(というか未発表音源集)『Zenology』が1995年に発売されました(本国では A2Z レーベルにて発売)。
 未発表音源の寄せ集め集といえ、最初はセカンド・アルバム用にと録られた曲集、凄い出来です。一曲目"Heat of Emotion"後にFAIR WARNINGでも取り上げる曲ですがこちらはマイケル・フレクシグのヴォーカル、アルバムトップを飾るにふさわしい必殺チューン。若干哀愁を帯びたメロがジャーマン・ロックを感じます、ジーノのギターも良し、好きな曲です。
 3曲目"Together"はポップ調バラード、爽やかで綺麗なメロガ心地よし、中盤盛り上がって高音ヴォイスになるとマイケル・フレクシグの良さが出ます。次の"Surviving the Night"はボン・ジョヴィ風なキャッチーなハード・ロック、ここでのヴォーカル、トミー・ハートも高域が魅力の人なのでハイ・トーンが続くこの曲にあっています。"Out in the Night"もトミーのヴォーカル曲、ヴォーカル出だしの一音目からハイトーンで搾り出すような若さは填ります。"In Love with an Angel"はソフト・ロック、爽やかなコーラスは後期ベイ・シティ・ローラーズ風でした。
7曲目、9曲目、10曲目はベース、キーボード担当のHelge Engelke(ヘルゲ・エンゲルケ)がヴォーカル担当で個性派マイケルとトミーの中に混じるとちょっと弱い感じを受けました。

 '98年発表の 『LISTEN TO THE LIGHT』は実質的なセカンド・アルバムというのことになりますが、ウレ・W・リトゲンやトミー・ハートはFAIR WARNING活動中で参加していません。ジーノがギター、ベースとシンセを弾きドラムスはコンピューターの打ち込みドラム(ボーナス曲はC.C. ベーレンズが叩いているようです)。と実質ジーノとマイケル・フレクシグの二人での作品と成っています。このアルバムでのジーノのギターは素晴らしいです。特に"Meet Me at the Rainbow"あたりは曲の良さと相まってアルバム中最も印象深いです。マイケルの方の聴き曲は"I Would Die for You"でしょうか。あと2曲目"Love in Your Eyes"は二人の良さが出たなかなかの名曲です。
 HR/HM系を意識して聴こうとすると、一曲目"Goddess of Sunrise"はカンフー映画の主題歌みたいで、6曲目"Follow the Wind"のメロは歌謡曲みたい・・・ととまどいも有りますが、もともとエキゾチック(それも東洋系だったり北欧系)な雰囲気を漂わせていたバンドで、曲自体は充分に良いメロ持っています。
 
 2005年に発売された『ZENOLOGY U』は再び未発表音源集(1983年〜1989年録音分)と成りますが、ZENOのアルバムの場合、未発表音源集の方がレギュラー・アルバムより凄いのが驚きです。4枚の中ではHR/HMアルバムとして私は一番好きです。メンバーはウレ・W・リトゲン、C.C. ベーレンズにヴォーカルはマイケル・フレクシグとトミー・ハート(2曲のみ)。
 まずトップの".Call of the Heart"、ハイトーンヴォーカルにベースとドラムスが絡みギターが噎ぶように被さり徐々に高揚していく流れで当に填ります。"Tonight"はZENO特有のメロディーラインでしょう。なめらかで美しい流れの疾走ナンバー、イイですねぇ。"Heart Beat"はトミーのヴォーカル・ナンバー。若干エコーがかかっています。ちょっとポップでボン・ジョヴィ風かしら。次の"Dreaming the Night Away"も全く同じ流れの曲調でこの曲もトミーのヴォーカル・ナンバー。2曲とも良い曲ですね。
 "Victoria"と"Keep Your Love"は良い曲なのですが何度も聴くと若干執こさが出ますが ".Troubled Love"は聴くほどに味が出てきました。

 『LISTEN TO THE LIGHT』から実に8年ぶりの新作が『RUNWAY TO THE GODS』 。未発表音源集を抜くと20年間で3枚のアルバム発表という寡作 ミュージシャンのジーノです。前回のヴォーカリスト、マイケル・フレクシグは音楽業界から身を引いてビジネスマンに成ってしまわれたとか。トミー・ハートは一時解散状態だったフェア・ウォーニングの再結成参加の為にジーノの新作には不参加となった様子。そこでジーノが選んだシンガーはマイケル・ボルマン。'80年代からレコーディングをしており、主にドイツのバンド Jaded Heart で歌っているハードロック・シンガー。一曲目"Fanfares of Love"を聴けば解りますが、ZENOのサウンドに見事に填っています。それにしてもジーノのギターは年を重ねる事にかっこよく成ってきています。
 驚いたのは三曲目"Land of Illusion"は。'80年代後半‘飛ぶ取り落とす時期’のボン・ジョヴィサウンドにそっくりでありました。".Shades of Blue","Runway to the Gods"も聴き物。

 そして、"Refugees(Longing for Paradise)"は完全なZENOサウンド、マイケル・ボーマンのヴォーカルもZENOサウンドに違和感なくとけ込んで、マイケル・フレクシグ、トミー・ハートに引けはとっていないようです。 ただ、次の"I Feel-I Live"のヴォーカルは好きにはなれません。
全体的には満足度の高いアルバムです。


ZENO ZENOLOGY Listen to the Light
ZENO 1986 LP
USA Manhattan/EMI  ST-53025
A
1. Eastern Sun
2. A Little More Love
3. Love Will Live
4. Signs on the Sky
5. Far Away
B
1. Emergency
2. Don't Tell the Wind
3. Heart on the Wing
4. Circles of Dawn
5. Sent by Heaven
6. Sunset
ZENOLOGY 1995 CD
Japan Zero XRCN-1226

1. Heat of Emotion
2. Is It Love
3. Together
4. Surviving the Night
5. In The Dark
6. Let There Be Heaven
7. Man on the Run
8. Out in the Night
9. You Got Me Down
10. Ticket to Nowhere
11. In Love with an Angel
12. Crystal Dreams
LISTEN TO THE LIGHT 1998 CD
Japan Zero XRCN-2019

1. Goddess of Sunrise
2. Love in Your Eyes
3. I Would Die for You
4. Meet Me at the Rainbow
5. Light of the Morning
6. Follow the Wind
7. Listen to the Light
8. Luna and Mercury
9. Some Rocks Don't Roll (For Jimi and Bob)
10. Eden on Fire
11. Tomorrow Arise
12. Rainforest Tears
13. Sunset in Paradise
bonus
14. Walking on a Thin Line
Zenology 2 RUNWAY TO THE GODS
ZENOLOGY U 2005 CD
Japan Zeno/EMI TOCP-67703

1.Call of the Heart
2.Tonight
3.Hard Beat
4.Dreaming the Night Away
5.Good Game Bad Game
6.Victoria
7.On My Way
8.Keep Your Love
9.Troubled Love
10.Time
11.Free Again (Eagle Of Love)
RUNWAY TO THE GODS 2006 CD
Japan Zeno/EMI TOCP-70059

1.Fanfares of Love
2.Climb the Sky
3.Land of Illusion
4.Shades of Blue
4.Runway to the Gods
6.Sogno Di Angelo
7.Refugees(Longing for Paradise)
8.I Feel-I Live
9.Purity(Pilgrims of Remembrance)
10.Do You Feel the Time
11.Sunset Birds Flying Home(Celestial Touchdown)

 ZINOのギターリスト、ジーノ・ロートさんが2018年2月5日に亡くなられたいたということ、暫く知りませんでした。音楽界の第一線から退き裏方作家や文筆家としての活動を続けられているとの事でしたが、長年の病気(病名非公開)が原因で亡くなられたということです。 素晴らしい演奏を残してくださり、ありがとうございました。

 1984年2月に結成されたバンドZENOの初期メンバーでヴォーカリストのMichael Flexigがジーノの未発表音源を元にジーノ・ロートへの追悼アルバムを出しました。1曲目〜15曲目まではウレ・ウィンソミー・リトゲン加入時の`80年代の物で間違いなくバンドとして充実していた時期のZENOの音源でしょう。(12曲目の "Is It Love" はトミー・ハートのヴォーカルがオリジナルですが、ここではマイケルのヴォーカルに差し替え)
 16曲目以降はウレ・リトゲン未参加曲で初期の音源ではないのですが、`98年発売時にかなりリミックスが行われていたらしく、オリジナル録音を元に忠実なミキシングを施したヴァージョンだという事です。ジーノ・ロートさんの奥様である直子さんが "Meet me at the Rainbow" が《一番の想い出の曲》として挙げられているメッセージが彼女のSNSページにアップされていた物を読んだことあります。

KEEPER OF THE FLAME-The Voice of ZENO- / Michael Flexig
KEEPER OF THE FLAME
  -THE VOICE OF ZENO-

by Michael Flexig
2019 CD Japan
Ward Records GQCS-90838

1.Don't Count Me Out
2.Good Game Bad Game
3.Far Away
4.Signs on the Sky
5.Don't Tell the Wind *
6.Eastern Sun
7.A Little More Love
   (A Little Bit Love) *
8.Love Will Live
9.Heart on the Wing
10.Circles of Dawn *
11.Sent by Heaven *
12.Is It Love
13.Walking on a Thin Line
14.Out in the Night
15.World of Tomorrow
16.In Love with an Angel
17.Meet Me at the Rainbow
18.Listen to the Light
19.Love in Your Eyes

*= unrelease
recorded
#1-11, 1983
#12-15, 1987
#16-19, 1997


Fair Warning


 上記ZENOの項の如くZENOのセカンド・アルバム製作途上で解散させられたメンバーのUle W. Ritgen、Tommy Heart 、CC Behrensが中心となって結成されたバンドがFAIR WARNINGで他にHelge Engelke(ZENOの未発表集『ZENOLOGY』でも歌っています)、Andy Malecek が参加。
 
 1992年、バンド名を冠した『FAIR WARNING』でCDデビューしています。ZENOもファースト・アルバムから完成度の高い作品でデビューしましたが、このフェア・ウォーニングのファーストも印象深いアルバムでした。
 時代的に私はどうもボン・ジョヴィを意識してしまうのですが、こちらでも全体的な曲調はボン・ジョヴィ風味を感じました。
先ず一曲目"Longing for Love"はデビュー・アルバムのトップを飾るにふさわしくインパクトのあるキレのある格好良きナンバー。トミー・ハートの声にマッチしています。
 三曲目スローな"The Call of the Heart"、四曲目ポップな"Crazy"の2曲のきらびやかさはベイシティ・ローラーズを思い起こされました。五曲目".One Step Closer"は何故か Jポップ 的サウンドを感じますが三曲揃って印象深い曲でした。
 六曲目"Hang on"、七曲目"Out on the Run"の2曲がハード・ロックナンバーとしては聴き応えあり良い出来だと思います。トミー・ハートのヴォーカルも搾り出すようでこの曲にも合っていますね。
 "Long Gone"は朗々と歌い上げるナンバーで'90年代Jポップ風。悪くはないですが、「見込み通り、「想定通り」といったメロの流れが弱いので、もしフレディ・マーキュリーなどが歌っていたら・・・と思ってしまいました。
 ".The Heat of Emotion "この曲だけはジーノ・ロートの作ですので、やはりZENO的な構成を持っていますね。ここでもボン・ジョヴィをかいま見てしまいますが好きな曲です。
 ラストの"Take Me Up" も"Long Gone"同様。歌い上げるナンバーですが、メロは"Long Gone"よりも更に単調で印象は薄い感じ。

 ジャーマン・ロッカーの作り出すメロのいくつかは日本人の心底に響く物が有るのか、英米より日本で先に人気が出るバンドは多いようです。フェア・ウォーニングも同様で2枚目のアルバムはなんと1993年4月18日川崎でのライヴでの録音物。
(ドイツのバンド、スコーピオンズ、アクセプト、マイケル・シェンカー・グループなど、最初のライヴ・アルバムは日本公演の物でしたよね・・・ロックバンドではないですがPOPグループ、アラベスクも唯一のライヴ物は日本公演)
 『LIVE IN JAPAN』 曲目はファースト・アルバムからの曲にウレ達がZENOで演奏していた"Eastern Sun","A Little More Love"を含めて、期待通りの演奏を聴けるわけですが、ご愛敬で歌った"sukiyaki(上を向いて歩こう)"は歌わなかった方が良かったのでは?(スコーピオンズの"荒城の月"は上手でしたが)
 マック・ディビス作プレスリーでヒットした"In the Ghetto"はまずまず、モータウン・ナンバー、ミラクルズの"Mickey's Monkey"は彼らのイメージとはかけ離れて意外に ファンキーなノリでなかなか結構でありました。

スタジオ録音で実質セカンドの『RAINMAKER』、カバージャケットはジャーマンらしからぬモロアメリカンでバンドロゴ物より私は好きです。そして中身も前半はカラッとしたアメリカよりの曲が多く、その曲調中でも"Lonely Rooms"はイイですね。トップの"Stars and the Moon"などは彼らに抱いたイメージとは違いますが、良く計算された構成で聴き物です。
 フェア・ウォーニングが持つ特有の良さが出たのは後半の哀愁を帯びた"Burning Heart"、"What Did You Find"あたり、特に"Burning Heart"はギター・ソロの中間部分が印象的です。トミー・ハートのヴォーカルもドンピシャで良い感じ。
  ファーストよりも良い曲が揃っている感じです。このアルバムは欧米版と日本盤は曲順が大幅に違うようで収録曲数も数種有るみたいです。
  このアルバムの製作後にギターリストのアンディ・マレツェクが全身麻痺の奇病にかかったとかでツインリードで始まったバンドでしたが、次第にギターのソロパートはヘルゲ・エンゲルケ主体に変わっていきます。
Fair Warning Live in Japan Rainmaker
FAIR WARNING 1992 CD
Japan WEA/Warner WMC5-518

1.Longing for Love
2.When Love Fails
3.The Call of the Heart
4.Crazy
5.One Step Closer
6.Hang on
7.Out on the Run
8.Long Gone
9.The Eyes of Rock
10.Take a Look at the Future
11.The Heat of Emotion
12.Take Me Up
LIVE IN JAPAN 1993 CD
Japan WEA/Warner WMC5-677

1. Sunset (intro)
2. Out on the Run
3. Longing for Love
4. When Love Fails
5. Eastern Sun
6. Take Me Up
7. Long Gone
8. The Heat of Emotion
9. Take a Look at the Future
10. The Call of the Heart
11. In the Ghetto
12. Sukiyaki
13. Hang on
14. The Eyes of Rock
15. One Step Closer
16. A Little More Love
17. Mickey's Monkey
RAINMAKER 1995 CD
Japan WEA/Warner WPCR-220

1. Stars and the Moon
2. One Way Up
3. Too Late For Love
4. The Heart of Summer
5. Don't Give Up
6. Lonely Rooms
7. Desert Song
8. Pictures of Love
9. Desolation Angels
10. Angel of Dawn
11. Burning Heart
12. What Did You Find
13. Get a Little Closer
14. Rain Song
 

先ず日本で人気が出た事へのお礼の意味を込めての日本独占販売のミニ・アルバムが『LIVE AT HOME』、カバージャケットのデザインは『RAINMAKER』と同時期の物を使用していて続編の様にも感じられます。ただ内容は1995年6月ドイツでのアコースティック・ライヴの模様の6曲と既発曲の未発表ヴァージョン(7曲目、8曲目)の8曲構成。帯には「力強いサポートをありがとう」と記されています。
 元々の楽曲が気に入っていた"Hang on" と"Burning Heart"はアコースティックヴァージョンのここでも聴きごたえ充分です。

 そして実質のサードアルバム『GO』、 大手WEAを離れてFrontiers Records(日本ではZero Corporation)からのリリース。彼らのアルバムの中で一般的には一番の人気作でしょうか?
 確かに前半は彼らの豊かなメロ作りが開花した華麗でキャッチーな曲が連続で湧き出てきます。特に2曲目は当にトミー・ハートの声質にピッタリで「若い」ということの素晴らしさを狂おしいほどに感じます。4曲目"I'll Be There"もPOPながら、そんな彼らの青春している姿が随所に感じられた好きな曲ですね。
 アルバムの中頃は若干詰めの弱い部分もありますが後半は渋め曲が並びますが、まぁ盛り返します。"Eyes of a Stranger","Sailing Home"あたりは前半の爽快さ・痛快さとは対照的な渋め・控えめなながらも力強さを感じます。

 そしてまたライヴ物で『LIVE AND MORE』、今回も日本公演収録音源、1997年6月23日の東京渋谷公会堂でのライヴ。アルバム『GO』からの必殺曲".Angels of Heaven"、".I'll Be There"と続くところはさすがですね。"Follow My Heart"はスタジオ盤よりこちらの方が私は好き。
そして"Save Me"、"Burning Heart"と後半の2曲はこれまた嬉しい!締めくくりの"Stars and the Moon"も良しです。
 2枚組ディスク2のトップはモロフェア・ウォーニングサウンドの"Like a Rock"で始まり2曲目"Meant to Be"は淡々と語りかけるようなバラード、彼らのバラードタイプの曲は割と歌い上げタイプが多いですが、この淡々とした曲の方が良いのじゃないでしょうか?(後半は歌い上げているようですが・・・)

Live at Home GO Live and More
LIVE AT HOME 1995 CD
Japan WEA/Warner WPCR-405

1. Hang on
2. Angel of Dawn
3. Don't Give Up
4. Desert Song
5. Burning Heart
6. Rain Song
7. What Did You Find
8. Rain Song
GO 1997 CD
Japan Zero/EMI XRCN-1292

1. Angels of Heaven
2. Save Me
3. All On Your Own
4. I'll Be There
5. Man on the Moon
6. Without You
7. Follow My Heart
8. Rivers of Love
9. Somewhere
10. Eyes of a Stranger
11 .Sailing Home
12. The Way You Want It
13. The Love Song
LIVE AND MORE 1998 CD
Japan Zero/EMI XRCN-2032-2033

Disc 1: Live

1. Angels of Heaven
2 .I'll Be There
3. Man on the Moon
4. Don't Give Up
5. Desert Song
6. We Used to Be Friends
7. Follow My Heart
8. Come On
9. Save Me
10. Burning Heart
11. Get a Little Closer
12. Stars and the Moon

Disc 2: More

1. Like a Rock
2. Meant to Be
3. Out of the Night

 
 1997年の『GO』以来3年ぶりのスタジオ盤『4(Four)』が発表されたのが2000年。1999年に国内のゼロ・コーポレーションレーベルが事業撤退したためにFrontiers Records系列の国内販売はMarqueeレーベルを通じて出されるようになりました。(発売はビクター・エンタテイメント)。
 このアルバムの製作途中にドラムスのC・C・ベーレンスが脱退してしまいましたので彼が叩いた曲は"I Figh"1曲のみの様です。その他の曲ではPhilippe Candas という人が叩いているのですが、そのせいかこのアルバムでのドラムスは"I Figh"意外は全体的に軽い感じですね。"I Figh"のドラムスは確かにズシンズシンと力強い感じですネ。また、このアルバムの発表後、病気持ちだったアンディが脱退、続いてヴォーカルのトミー・ハートも脱退と脱退者が相次ぎ、実質活動停止・・・解散と成ってしまいました。
 で、このFair Warning(第一期)のラスト・アルバムの内容はというと、今までのように絶対的な目玉となる必殺チューンはないかも知れませんが、曲自体は粒ぞろいでアルバム1枚全部聴き通すとしたら、人気作『GO』よりもこちらの方が断然良いです。やはり名盤の一つでしょう。
 "Heart On The Run"、"Break Free"、"Tell Me I'm Wrong"、"I Fight"、"Eyes of Love"、"Find My Way"、"Still I Believe"等々が特に好きな曲です。

 フェア・ウォーニングのFrontiers音源が日本での発売レーベルZeroからMarqueeに替わり発売会社も東芝からビクターに替わったのをきっかけに『GO』と『LIVE AND MORE』がボーナス曲を追加して2000年に再発されました・・・。
CD・レコードの発売元が未発表曲集・別テイク集として一枚にして出すことをほとんどしない様でして、ほとんどの場合1〜2曲ずつ小出しに分散させて既成アルバムに追加のうえ再発という形で出しますよね。一応買いました・・・。
 再発盤『GO』には『ANGEL OF HEAVEN』というCDシングル(ミニアルバム)にのみ収録されたバラード"Light In the Dark"が聴き物でしたが、再発盤『LIVE AND MORE』に追加された別ヴァージョンはまぁ普通でございました。
 そしてビクターさんは更に追い打ちをかけてベスト物『A DECADE OF FAIR WARNING -Complete Best』を発売しました。このベスト盤にはレーベルの枠を越えて4曲WEA時代の音源が組み込まれました。

4(Four) GO LIVE AND MORE
4(FOUR) 2000 CD
Japan Marquee MICP-10168

1. Heart On the Run
2. Through the Fire
3. Break Free
4. Forever
5. Tell Me I'm Wrong
6. Dream
7. I Fight
8. Time Will Tell
9. Eyes of Love
10. Find My Way
11. Night Falls
12. Wait
13. Still I Believe
  (#13 bonus track only Japanese press)
14. For the Young
GO 2000 CD (Original 1997)
Japan Marquee MICP-10169

1. Angels of Heaven
2. Save Me
3. All On Your Own
4. I'll Be There
5. Man on the Moon
6. Without You
7. Follow My Heart
8. Rivers of Love
9. Somewhere
10. Eyes of a Stranger
11 .Sailing Home
12. The Way You Want It
13. The Love Song
---bonus tracks---
14. Without You (Different version)
15. Light In the Dark
16. Angels of Heaven (Karaoke version)
17. Follow My Heart (Different version)
LIVE AND MORE 2000 CD (Original 1998)
Japan Marquee MICP-90003

Disc 1: Live

1. Angels of Heaven
2 .I'll Be There
3. Man on the Moon
4. Don't Give Up
5. Desert Song
6. We Used to Be Friends
7. Follow My Heart
8. Come On
9. Save Me
10. Burning Heart
11. Get a Little Closer
12. Stars and the Moon

Disc 2: More

1. Like a Rock
2. Meant to Be
3. Out of the Night
4. All on Your Own (Different version)
5. Give in to Love
6. Come on
7. Rivers of Love (Different version)
     
 A DECADE OF FAIR WARNING -Complete Best
2001 CD
Japan Marquee MICP-10275

Disc-1:
1. Out on the Run
2. Save Me
3. Forever
4. All on Your Own
5. Heart on the Run
6. When Love Fails
7. Ill Be There
8. Tell Me I'm Wrong
9. Still I Believe
10. Angels of Heaven
11. Through the Fire
12. Sailing Home
13. I Flight
14. Eyes of a Stranger
15. Come on
16. Burning Heart
17. Long Gone

Disc-2: Bonus Disc
1. Find My Way (Different version)
2. For the Young (Different version)
3. Close Your Eyes (Different version)

   
 2000年解散していたFair Warning、2006年に再結成復活しました。(ヘルゲのDreamtide、トミーのSoul Doctorの人気がいまいちでなんとなく再結成しそうな雰囲気でしたが)
 トミー・ハートはこのバンド再結成のために、ZENOのアルバム『RUNWAY TO THE GODS』で前述の如くジーノに参加を依頼されながらも、フェア・ウォーニング復活作参加を選んでいます。メンバーはギターのAndy Malecek(アンディ・マレツェク)以外の4人、Tommy Heart(トミー・ハート), Helge Engelke(ヘルゲ・エンゲルケ)、C.C. Behrens(C・C・ベーレンス)、Ule W. Ritgen(ウレ・リトゲン)が戻ってきています。

 復活作となったのは『BROTHER'S KEEPER』。創世記からの一文「兄弟を守る責任を持つ者」という意味深なタイトル。内容はというと先ずは全編に「あのFair Warningサウンドが帰ってきた」とおきまりの音作り・曲作りで安心感を感じます。ただ、今回は群を抜いた重量級の曲はなかったですが6年ぶりの復活作ですのでまずまずでしょう。スピードチューンの"Tell Me Lies"も良かったですが、もっとも気に入ったのは青春ポップな"Wasted Time"でした。

 復活後の2作目、スタジオ盤としての通算6作目が2009年発表の『AURA』 。わたしの買ったのはベルベットを貼ったボックス仕様(意味不明な豪華さ)2枚組の国内初回盤。全体的に満足とはいえなかったアルバムでしたが、まぁ2枚目ボーナスCDの"Just as She Smiles"が彼ららしさを感じない曲ながらも、個人的に気に入りましたので「豪華版でも良かったのよねぇ」と言い聞かせております。本編ディスク1の方はトップ"Fighting for Your Love"、セカンド"Here Comes the Heartache"が典型的なFair Warningサウンドで先ずは聴き手を安心させますが第一期時代のような印象深さは薄く「手慣れ感」を感じてしまいました。
 3曲目以降は聴き直してみても印象は薄かったです。

 2013年に復帰後3作目が出ましたタイトルは『SUNDANCER』。初期の名作『RAINMAKER』と対を成すようなタイトルとカバージャケットです。
・・・が『RAINMAKER』と違うのは前作『AURA』同様、どうも何度も繰り返して聴こうという気に不思議と成らないのですね。今回も2枚組も発売されては居ましたが買ったのは通常盤でした。1曲目"Troubled Love"だけはまだまだFair Warningらしさを保っていますが、楽曲のレベルは平均的です。演奏技術は円熟味を増していっても作曲部分は技術だけの能力ではないです物ね。
 長きに渡り活躍しているほとんどの大物ロックバンドにしましても、多くの人に衝撃を与えたデビュー時期の楽曲群から15年・20年と経っても初期の楽曲と同じレベルの楽曲を同じようなメンバーで引き続き送り出せて居る人たちってそうそう居ないようです。感性が若いほど創造性が豊かで有るというのがまず普通なのですから、同じ土俵で年齢を重ねるとマンネリ化するか質が上がらないというのは仕方ないことなのかも知れませんが。
 ラストの"Cool"に成ると、もうごく普通のロックバンドミュージックで、アレアレ?と思う始末です。
前作ボーナスCDの"Just as She Smiles"の様な違ったタイプのサウンド方向に向かうとまた新鮮な衝撃を受けること出来るかも?とも思いますが日本の多くのファンの方達は強いインパクトを受けた初期の"Longing for Love"、"Hang on"、"Out on the Run"辺りの音を求めてしまうのでしょうね。

 2012年に出た『BEST AND MORE』 デビュー20周年記念盤のコンピレーション。
また、ベスト曲集ですが、2枚目は殆どがライブ音源。その中に1曲だけレッド・ゼップの"Rock N' Roll"が入っているのを見つけました。初めて聴ける音源です、この曲の為にこのアルバムを買いました。トミー・ハートはレッド・ゼッペリンの大ファン。

 2016年に出た意表をつく様なカバージャケットのアルバム『PIMP YOUR PAST』。これは少し前に記していた文章の出来事、現在の歳と年を重ねたメンバーが20年以上以前に録音した曲を再録しなおしたセルフ・カバー新作アルバムです。Tommy Heart 、Ule W. Ritgen、CC Behrens、Helge Engelkeの4人。新曲でなく彼らを有名にした当時のベスト曲集ですので曲はすべてどれも上等で懐かしいものです。ただ、こちらも当時より歳を重ねておりますので初めて聴いた時ほどのインパクトはありません。でも。トミー・ハートはまだ50歳前、彼のヴォーカルは昔と比べてもそんなには衰えてはいないと思います。

 BROTHER'S KEEPER Aura  Sundancer 
BROTHER'S KEEPER 2006 CD
Japan Marquee MICP-10604

1. Don't Keep Me Waiting
2. Tell Me Lies
3. In the Dark
4. Wasted Time
5. No Limit  (bonus track)
6. Generation Jedi
7. The Way
8. All of My Love
9. Once Bitten Twice Shy
10. The Cry
11. All I Wanna Do
12. Rainbow Eyes
13. Push Me on
AURA 2009 CD
Japan Marquee MICP-30011

Disc 1

1. Fighting for Your Love
2. Here Comes the Heartache
3. Hey Girl
4. Don't Count on Me
5. Falling
6. Holding on
7. Walking on Smiles
8. Someday
9. It Takes More'
10. As Snow White Found Out
11. Falling Reprise

Disc: 2 : Bonus Disc

1. Station to Station
2. Just as She Smiles
3. Hey Girl (Alternative Version)
4. Fighting for Your Love (Alternative Version)
5. Station to Station (Alternative Version)
6. Falling Reprise (Alternative Version)
SUNDANCER 2013 CD
Japan Marquee MICP-11080

1. Troubled Love
2. Keep It in the Dark
3. Real Love
4. Hit and Run
5. Man in the Mirror
6. Natural High
7. Jealous Heart
8. Touch My Soul
9. Send Me a Dream
10. Pride
11. Get Real
12. How Does It Feel
13. Living on the Streets
14. Cool
Best and More Pimp Your Past
BEST AND MORE 2012 CD
Japan Marquee MICP-90057

Disc 1:
1. Burning Heart
2. Save Me
3. All On Your Own
4. Longing For Love
5. When Love Fails
6. Angels Of Heaven
7. Out On The Run
8. Don't Give Up
9. Long Gone
10. Generation Jedi
11. Don't Keep Me Waiting
12. Still I Believe
13. Heart On The Run
14. Here Comes The Heartache
15. I’ll Be There
16. I Fight
17. The Way You Want It

Disc 2:
1. Rock N' Roll
2. A Little More Love
3. Come On
4. The Heart Of Summer
5. Angel Of Dawn
6. The Call Of The Heart
7. Rain Song
8. Like A Rock
9. Out Of The Night
10. Meant To Be
11. Don’t Count On Me
12. Just Another Perfect Day
13. Light In The Dark
14. Man On The Moon
15. Children's Eyes
PIMP YOUR PAST 2016 CD
Japan BIG BEAT/King KICP-1760

1. Longing For Love
2. One Step Closer
3. Out On The Run
4. When Love Fails
5. Long Gone
6. Burning Heart
7. Pictures Of Love
8. Angels Of Heaven
9. Rain Song
10. Save Me
11. Don't Give Up

 下記は CDシングル。
 1995年に出た『BURBING HEART』は"The Coll Of The Wilds"がアルバム未収録の曲でした。'70年代のハードロック風、そして"Children's Eyes"は'92年4月18日川崎での録音曲,
聴きごたえありますね。この曲のオリジナルシングル・ヴァージョンは聴いていませんでしたが、2012年発売の『Best And More』に収録されました。
 1996年の『Angels Of Heaven』は"Light In The Dark"がアルバム未収録でしたが、2000年再発CD『GO』に収録されていました。
 『HEART ON THE RUN』もアルバム未収録ヴァージョン集でしたが、すぐに再発アルバムに収録されました。

Burning Heart  angels of heaven  Heart on the Run 
BURNING HEART 1995 CD
Japan WEA WPCR-218

1. Burning Heart
2. Pictures Of Love
3. The Coll Of The Wilds
4. Children's Eyes(Live)
ANGELS OF HEAVEN 1996CD
Japan Zero/EMI XRCN-1288

1. AngelsOf Heaven
2. I'll Be There
3. Without You(Single Version)
4. Light In The Dark(For Single Only)
5. AngelsOf Heaven(Karaoke version)
 HEART ON THE RUN 2000
CD
Japan Marquee MICP-40001

1. Heart On the Run (Single Version)
2. Break Free (Single Version)
3. Forever (Single Version)
4. For the Lonely

Soul Doctor

   
 フェア・ウォーニングから抜けて、トミー・ハートが結成したバンドがSoul Doctor(ソウル・ドクター)でした(フェア・ウォーニングはその後一旦解散)。 フェア・ウォーニングが日本でも人気が高かったのでソウル・ドクターも日本では何作も発売されていましたが、ジーノやフェア・ウォーニングサウンドとの違いが大きすぎて、同マニアからはがっかりされた方も居られ3作目以降はそれほど大きくは取り上げられなかった様です。

 ジーノ、フェア・ウォーニングとのサウンド違いもあり同じページで記さず別の機会にでもと思っていましたが、アルバム発表数も少なく、トミーが再びフェア・ウォーニングに戻った経由もあり、ここに別項扱いで記しておこうと思います。ヴォーカリストとしてのトミー・ハートはやはり凄いです。

 2001年ソウル・ドクターのデビュー・アルバム『SOUL DOCTOR』。初回限定盤にはカバージャケットと同じステッカーと丸いロゴシールが入っておりまして、我が国内では相当にプッシュされていたのがわかります。一曲目からまるで初期のレッド・ゼッペリンそっくりのサウンド、トミーのヴォーカルもロバート・プラント似です。この一曲目"Soul Doctor"のオリジナルはフォーリナー(Foreigner)の1992年シングルカット曲、当時のヴォーカルは故ルー・グラム。こちらトミーのヴォーカルは明らかにロバート・プラントそっくり,。2曲目"Shake 'Em On Down"のサウンド、ヴォーカルも然り。抒情性あるメロディックなロックでなく、王道のハードロックがトミー・ハートのやりたかった音楽だという事がよくわかります。わたしとしてはこちらのサウンドも勿論大好きですので歓迎であります。"Shake 'Em On Down"は素晴らしい出来です。3曲目〜5曲目はスローからミディアム調のヘビーなナンバー、"What Do U Want"ロックンロール調の軽快な曲、"Down The Blvd."はアメリカンっぽいカラッとした明るさを持ったポップな曲、ポップ系ロックも勿論好きですので、この曲も気に入りました。声質は全く違いますがサウンドはJ.Giles Band風でしょう。"Emotion In Motion"もアメリカン・ハード調です。"Does It Feel Like Love"はハイトーンヴォーカルを活かした曲。邦盤ボーナスの"Wild And On The Run"はしんみりとしたスローバラード。
 このファーストアルバムに参加したメンバーはクレジットによるとTommy Heart (vo)、Chris Lyne (g)、J.D.-Jörg Deisinger(b)、Zacky-Athanasios Tsoukas(dr)、となっております。クリスはトミーと幼馴染だという事です。

 セカンドは『SYSTEMS GO WILD!』、こちらは日本を意識してか邦盤先行発売となっておりました。こちらも1曲目〜2曲目は正統派ハードロックで始まり、3曲目"Get It On"は(T-Rexの曲とは異曲)きっちりのリフリズムが刻まれる王道メタル。このメタルリフに酔う人は結構いらっしゃるでしょう。中ほどに邦盤ボーナスとして入っている"Cheap Talk"はバラードでなくごく普通のロックンロール調ロックでした。8曲目"Our Time"9曲目"Good Time'S Slippin' Away"はレッド・ゼップ風,2曲どちらかというと"Good Time'S Slippin' Away"のトミーのヴォーカルに魅力を感じます。"Waitin'"が平均にも達していないスローバラード
ファーストと同じメンバーでしたが、ファーストの方がインパクト強かったです。

 3作目は『FOR A FISTFUL DOLLAR』(荒野の用心棒?)。メンバーの脱退、交代などがあり前作から3年ほど経っての発表でした。ベースがJogy Rautenberg(ヨギー・ラウテンバーグ)、ドラムスがMario B.(マリオB)という人たちに変わっています。3作目トップはリフが心地よく残る"Eatin' On Me"でスタート、2曲目"Best Way To Fade"はトミーがAC/DCやThe Whoらしい曲と表現したとの事ですが、わたしはMountainのサウンドを思い起こしました。曲自体は良いですね。"Remember"はロックらしさを残してのバラードで、メロが少し弱くまずまずの出来。"Where Do We G"はアメリカンストリートシンガーを連想させますがわたしにとっては印象的な曲でした。7曲目〜9曲目は普通のハード・ロック系ナンバー。10
曲目"Cheap.Down 'N Nasty"は引き語り系で途中ブルース・ハープがソロをとる異色曲。
ボーナス曲はレッド・ゼップのナンバーメドレー、フェア・ウォーニング時代も含めてライブではよくやるとの事です。トミーのレッド・ゼップリスペクトがよくわかります。

 4作目『BLOOD RUNS GO』はカバージャケットがブルーズ・ギターリストのアルバムかと思えましたが、一曲目から正統派ハードロックバンドそのものでした。このレスポールを弾く手のアップはクリス・ラインで、反対の裏側写真がマイクを持つトミーで、最早二人は対等の位置だというのがよくわかります。この4作目レコーディング時にはフェア・ウォーニング再結成がありトミーもフェア・ウォーニングへの復活が決まり同時に録音が進んでいました。そういった部分もクリスのギター写真が表になった要因の一つでは?と勝手に想像したりもします。
 さて、曲の方は"Blood Runs Cold","Temptation"と続くところは最高の始まりで2曲とも素晴らしいハードロックです。一曲飛んで".A.F.O.D."はレッド・ゼップ調、歌い方もプラント似。"Touch Of Love"はジョン・リー・ターナー、グレン・ヒューズ、スチュアート・スミスといった人たちの未発表共作ナンバーだとか、'90年代に作られたのでしょうか?泣きのギター・ソロが入ります。"The Ocean"アコーステックサウンド+ストリングス、淡々としたバラードです。"The Lie"はオーソドックスなハード・ロックで、こういうのは安心できます。
 "Revolution"はトミー自らジョン・レノンの"Imagine"みたいだと云うピアノのイントロから始まる後期ビートルズ調の曲、じっくり何度も聞くと耳に残る曲ですね。
このアルバムではドラマーが代わっています。Mihael Wolpers(マイケル・ウォルパース)という人、前作加入者マリオB.はソウル・ドクターに興味なくなったとかで脱退したそうです。
 日本盤ボーナスのライブ曲3曲は2001年パリでのライブレコーディング。フェア・ウォーニングではライブ演奏が少ないのが不満だったトミーらしく、2001年時期は熱気のこもった情景が浮かんできます。数多いライヴ盤の中でも凄く良いと思います。

 そして5作目がライヴ盤『THAT'S LIVE!』という事に成ります。一曲一曲の録音地クレジットはありませんが、2005年〜2007年に行われたヨーロッパ各地での録音からの抜粋の様です(ブックレットの殆どがライブ時の写真でした)。『TAHT'S LIVE』カバージャケットはトミーとクリスの演奏時写真です。メンバーは前作同様、トミー・ハート、クリス・ライン、ヨギー・ラウテンバーグ、マイケル・ウォルパースのラインナップ。どれも素晴らしいパフォーマンスです。

 ドイツ盤の後で発売された日本盤はライブ盤のみの1枚仕様の様でしたがドイツ盤は2枚組で2枚目は前発表曲の別テイク、別ヴァージョン集が入っています。前作ピアノイントロで始まった"Revolution"がドラムとギターで始まる別ヴァージョンが1曲目です。ピアノヴァージョンも良かったですが個人的にはこちらの方が好きですね。"The Ocean"は既発表ヴァージョンはストリングスが入っていましたが、こちらは丸っきりのアコースティックサウンドヴァージョン、おそらくこちらがオリジナルでしょう。シンプルサウンドで良いのではないでしょうか?

 6作目『WAY BACK TO THE BONE』はフェア・ウォーニングの『AURA』と同時期発表、録音はフェア・ウォーニング優先で進められたそうですが。この1曲目"First Man On The Moon" はどことなくメロなど抒情性がありフェア・ウォーニングを感じさせます。2曲目は古典的なハードロックながら、3曲目"Can't Stand Losing"も若干フェア・ウォーニングを感じます。
 "Times Of Yesterday"はトミーがドラマティックに歌い上げるバラードですが、この曲は以前にフェア・ウォーニングの為に書いたナンバーであちらでは没に成った曲だったとの事です、確かにフェア・ウォーニングに合った曲ですね。続く"Here Comes The Night"もこれまたフェア・ウォーニング寄りです。"Welcome To The Party"はハイトーンでぶっ飛ばす聴きごたえある曲です、コーラスも入りもう、初期のソウル・ドクターからはかけ離れたサウンドです。"Take It While It's Hot"が一番本来のソウル・ドクターに近い感じです。メンバーはドラムスがファーストアルバムのザッキーが途中から戻ったらしい(曲によって半分くらいはセッション・ドラマー、カーステン・クリックとのこと)。日本盤ボーナスの2曲はドイツ盤ライブの2枚目に収録されていた4曲のうちの2曲と同じヴァージョンです。
 
Soul Doctor Systems Go Wild! FOR A FISTFUL DOLLARS
SOUL DOCTOR
2001 CD
Frontire/Avalon MICP-10238(Japan)


1. Soul Doctor
2. Shake 'Em On Down
3. Goodbye
4. Before The Night Is Over
5. Unspoken Words
6. What Do U Want
7. Who Will Be There
8. You're All That I Want
9. Down The Blvd.
10. Emotion In Motion
11. Does It Feel Like Love
 [bonus track]
12. Wild And On The Run
   
SYSTEMS GO WILD! 2002 CD
Frontire/Avalon MICP-10321(Japan)

1. Livin' The Life
2. Wrong Or Right
3. Get It On
4. See You In Heaven
5. All Systems Go !
6. Cheap Talk  [bonus track]
7. Somebody
8. Our Time
9. Good Time'S Slippin' Away
10. Just Can'T Get Over You
11. Waitin'
FOR A FISTFUL DOLLARS
2005 CD
Frontire/Avalon MICP-10524(Japan)

1. Eatin' On Me
2. Best Way To Fade
3. Under Your Skin
4. Under Your Skin
5. Remember
6. Where Do We Go
7. Ten Seconds Of Love
8. The Trigger (Goin' Downhill)
9. Give Me A Ride (The Ride)
10. Cheap.Down 'N Nasty
 [bonus track]
11. Rock And Roll/Heartbreaker
Blood Runs Cold That's Live WAY BACK TO THE BONE
BLOOD RUNS COLD
2007 CD
Frontire/Avalon MICP-10689(Japan)

1. Blood Runs Cold
2. Temptation
3. Laugh in the Face of Danger
4. F.A.F.O.D.
5. Touch Of Love
6. The Ocean
7. The Lie
8. Revolution
9. Justine
10. Mr Youngblood
 [bonus track-Live Recording]
11. What Do U Wan
12. Shake'Em On Down
13. Goodbye
TAHT'S LIVE
2008 CD
METAL HEAVEN 09054(Germany)

Disc 1
1. Blood Runs Cold
2. Under Your Skin
3. Good Times Slippin’ Away
4. Temptation
5. See You In Heaven
6. Eatin’ On Me
7. Laugh In The Face Of Danger
8. Goodbye
9. Unspoken Words
10. Get It On
11. What Do U Want
12. Soul Doctor
13. Just Can’t Get Over You

Disc 2
1. Revolution (Diferente Version)
2. Danger (Diferente Version)
3. Juntine (Acoustic Version)
4. The Ocean (Acoustic Version)

WAY BACK TO THE BONE
2009 CD
Sevenseas/King KICP1441(JAPAN)

1. First Man On The Moon
2. Lightning And Thunder
3. Can't Stand Losing
4. Love Crashed Down (Boom Down!)
5. Times Of Yesterday
6. Here Comes The Night
7. Heartache Heartbreak
8. Coming Home
9. Welcome To The Party
10. Take It While It's Hot
 [bonus track]
11. Revolution (Different Version)
12. Danger (Different Version)

Tommy Heart

    ジーノ、フェア・ウォーニング、そしてソウル・ドクターで歌い続けてきたヴォーカリスト、トミー・ハート。またフェア・ウォーニング再結成で戻ってはいますが、彼にはまだまだやりたい事があるようです。ソロとしての活動も始めましたので、このページで別項として更に追加記入しておこうと思います。

 先ずは4曲入りのCDシングル、2011年3月11日の東日本大震災から一年、日本好きのトミー・ハートが中心になってハードロック・ヘビーメタル系のミュージシャンが集めて被災地の支援チャリティーソングを録音しました。曲はビートルズの"Help!"、4種のヴァージョンで収録。バラード調のアレンジで歌い上げています。Helge Engelkeを始め、Don Airey、Neil Murray等25名程が参加しています。海外盤ながらルイス・セストという人が、Avenue of Allirs のグレガー・ケリーが書いたライナーを訳し日本語ライナーを載せています。

 そして彼が遂にソロアルバムを作りました。
 ソロとしてのアルバムタイトルは『SPIRIT OF TIME』,サポートメンバーはHelge Engelke、Andy Malecek、Torsten Luederwaldtなどフェア・ウォーニング関連のミュージシャンやトミーとは旧知のギターリストRene Schostak(共同プロデュースもしている)他の人たち。
 日本盤先行発売で一曲目がボーナストラック、驚いたのはいきなり「地獄の底から再び這いあがり・・・」と日本語で歌われはじめた事!
 日本のアニメのテーマソングっぽいとトミーが思ったそうですが、確かにそんな感じに聴こえます、そうロボット・アニメ風です。「当初から応援してくれた日本のファンへのお返し」だそうです。次の"Back For More"はポップで明るい曲、この曲は大好きです。まるでベイ・シティ・ローラーズの様、トミーのここでのヴォーカルは若々しく甘いです、驚きです!
 "Don't Leave This Way","Best Times"の2曲は淡々としたメロのポップス系ですが、メロディーに何とも言いようがないほどの甘酸っぱさがあり凄く気に入っています。作者はMats Hedström/J.Meyer マッツの方は同曲でギターも弾いています。 "You And Me"、"In The Eye Of The Storm"、"Lean On My Shoulde"等もポップ系のロックで'70年代の音を感じます。"Born To Run"は少し単純すぎ。"Catch Me When I Fall"は部分的に聴きごたえありますが全体的には惜しい感じ。"Touch Of Heaven"は再びMats Hedström/J.Meyer 作、この曲も甘酸っぱいメロと若々しいコーラスが気持ちよくてお気に入りです。歌詞も青春っぽい!
 "Help!"はビートルズの大ヒット曲で東日本大震災チャリティ−ソング録音盤の再録。聴きごたえあります。このアルバムはエネルギー感溢れていて大満足です!

 2017年にトミー・ハートが発表したアルバムはキー・マルセロと組んだアルバムに成りました。わたしはジョン・ノーラム在籍時のヨーロッパは聴いていましたが、マルセロはノーラム脱退後の後釜ギターリストで、それまでも幾つかのバンドでプレイしていたとのこと。風貌はオジー・オズボーンに似ているでしょうか?プロジェクトを組んだきっかけはイタリアのFrontireレコードの意向らしいです。ベースはKen Sandin、ドラムスはMarco Di Salvia。
 タイトルはプロジェクト名そのまま『KEE OF HEARTS』。このアルバムも日本盤先行発売となり、ボーナストラック付きです。一曲目"The Storm"からバッチリのHM、90点を少し超えるくらいの出来ではないでしょうか? 2曲目はモロにメロディアス・ハード・ロック"A New Dimension"、フェア・ウォーニングのサウンドに近いですね、良い曲です。曲はAlessandro Del Vecchioでバッキング・ヴォーカルも担当、このアルバム全体のプロデュースもしています。3曲目〜6曲目もそこそこの出来です。"Invincible"はちょっと弱いです。8曲目、9曲目もそこそこ。"Twist of Fate"のタイトルを見たときオリヴィア・ニュートン・ジョンの曲かとも思いましたが、別曲デル・ヴェッキオの曲でした、でもポップ性もある軽めのハード・ロックでした。 次の"Learn to Love Again"も軽めですがスピード感あふれたメロディアス・ハード・ロックで締めています。ラスト曲のボーナスは完全におまけ。無難にまとめられた感のあるアルバムでした。
 
 
Help for Japan Spirit of Time Kee of Hearts
HELP FOR JAPAN 2012
Various
Avenue of Allirs AVENUE 12 02 0040 (Germany)

1. HELP!
2. HELP! (Tommy Heart Version)
3. HELP! (Guitar Version)
4. HELP! (Extended Version)
SPIRIT OF TIME 2016
Tommy Hearts

SevenSeas KICP-1822 (Japan)

1. Spirit Of Time (Special Version)
2. Back For More
3. Don't Leave This Way
4. Best Times
5. You And Me
6. In The Eye Of The Storm
7. Lean On My Shoulder
8. Born To Run
9. Catch Me When I Fall
10. Touch Of Heaven
11. Help!
12. Build Your Life On Me
13. Spirit Of Time
14. Don'T Leave This Way (Special Mix)

[bonus track]
track 1 and 14
KEE OF HEARTS 2017
Kee Of Hearts

Frontire/Avalon MICP-11368(Japan)

1. The Storm
2. A New Dimension
3. Crimson Dawn
4. Bridge to Heaven
5. Stranded
6. Mama Don't Cry
7. Invincible
8. S.O.S.
9. Edge of Paradise
10. Twist of Fate
11. Learn to Love Again

[Bonus]
12. Invincible (acoustic Version)


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