鰯雲
(いわしぐも)
空は焼けていない
涼しさが駆けてきた
どこかの娘の
オセンチ引き連れて
空は高く広がり
恋しさをつのらせた
どこかの娘の
小さくかよわき恋に
空を見上げれば
あの娘の秋が
わたしの青春みたいに
散らばっている
優しき鰯雲に似て
SEPTEMBER 1, 2001
褪せない秋
夕暮れ時の橋の上
川原に見えるのは
犬の散歩に付き合う
ワンピース姿の少女
ひとりと一匹
ほんの少し前までは
この川原にも夏が居た
夕暮れ時の橋の上
前髪なびかせる
風の香りに想い出す
ふたりのひとつ目の秋
あなたとわたし
ただ歩き続けただけの
あの川原にも秋が来る
あなたの町の橋の下
いつまでも蘇る
ひとりぼっちのわたしに
あなたのこぼれる笑顔
聞こえないように
小さな声で「幸せ」と
ふたりの秋に答えてた
SEPTEMBER 2, 2001
膝を抱えた秋
目映い夜空は
遠い日々のよう
怖れを知らない
夜がある
孤独の中で
飛びまわり
夢は夜に扉をあけた
コウモリのように
夜を愛した日
今
暗い夜空に
膝を抱えて待っている
待つものさえ
わからぬままに
SEPTEMBER 3, 2001
化粧
ときどき
疲れ果ててしまったように
綺麗でなくても良い
素のままで居たいと思う
なのに
私の好きな私の土地は
いつも綺麗に
お化粧している
春はピンクに夏青く
秋は紅くに冬白く
何を想って色づくの
綺麗な景色よ
誰に恋してる 誰に見せたいの
あなたはいつも
お化粧してる
SEPTEMBER 6, 2001
太陽法子さんのメルマガ、「詩人の会話」に掲載されました。
縋(すが)るもの
どんなに弱虫でも
臆病者でも 想わない
傷つくのが怖くて
愛せない
壊れるのが怖くて
愛せない
ひとりぼっちが
もっと怖いから
壊れないと信じてる
今夜もまた
恋の途中が呼んでいる
SEPTEMBER 8, 2001
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