Maria Creuza



Maria Creuza Silva Lima (1944年2月26日生)。 ブラジルのサンバカンソン女性シンガー。
 マリア・クレウザとの出会い。

 わたしは小学五年生頃に「カギッ子」と呼ばれる子供に成っていました。日曜日などは友達と外で遊ぶことも多かったのですが平日は学校が終わると真直ぐに家へ帰り、ラジオで音楽を聴いたり本を読んだりして過ごすのが殆どでした。(. . .小学生時代は漫画が主で読書とは云い難い行動で)
 京都は学生の多い街だった為に [貸本屋] というお店がかなりあったと思います。当時の家からも自転車で五分程度の場所にいつもオジサンひとりが奥に座っている [貸本屋] さんがありまして、漫画以外に文庫本などの小説も置いてありました。中学生頃から小説好きにもなりコナン・ドイルのホームズ・シリーズやH.G.ウエルズのSF物を漁って読んでいました。二十歳になる頃には五木寛之さんなど日本の作家物に変わりましたが、高校時代は非現実的なヒーロー・ヒロイン物にハマっていました。その中にシリーズ物でエドガー・ライス・バローズの「火星シリーズ」がありまして、第一作「火星のプリンセス」をえらく気に入り、続編を続けて読んだりしていました。ヒーロー人物はジョン・カーターなのですが、ヒロインの火星人王女デジャー・ソリスの持っている芯の通った正義感とメゲる事の無い強い意志そして他者に媚びる事等はありえないという聖人君子・君女的な人物像・女性像に惹かれたのを覚えています。

 そして、かなりの月日が流れて行った頃、第二期のブラジル音楽ブーム(`60年代のボサノバ・ブームを第一期とすると)が訪れていまして、ジャズ・ファンにも興味が広がっていました。元々のキッカケはマイルス・デイヴィス門下生ウェイン・ショーターがマイルスから独立しだした時期頃にブラジル音楽に興味を持っていた様です、そして`70年代中頃に Milton Nascimento (ミルトン・ナシメント) と共演してから`70年代後半にブラジル音楽のブームが起こりました。(アルバム『Native Dancer』)
 その影響で時々買っていた月刊誌に『中南米音楽』がありました。そこでの新作紹介欄に載っていたアルバム『Sessâo Nostalgia 哀しみのノスタルジア』のジャケット写真を見た途端にデジャー・ソリスを想い出し彼女の面影と被ってしまいました。

 `70年代後半、日本にとってのブラジル音楽は静か系のボサノバ・ブームからサンバリズム施行楽曲へ移行して行った時期で、 ベッチ・カルヴァーリョ (Elizabeth Carvalho)、ジルベルト・ジル (Gilberto Gil) 等が邦盤でよく目にしましたが、ボサノバ系でも引き続き、アストラッド・ジルベルト (Astrud Gilberto)、ナラ・レオン (Nara Leão) 、ジョアン・ジルベルト (João Gilberto) 、ガル・コスタ (Gal Costa) 等の邦盤もよく目にしました。(それぞれ一枚は購入しましたが続いていません)
ただ、マリア・クレウザは当時そこまで人気は無くてレコードを見つけにくかった記憶があります。

 `70年代後半時のわたしは HR/HM、Southern Soul といった両極端音楽に傾倒していましたので、その種の輸入盤店のいくつかにはよく顔出しはしていましたが、まぁ、当然ながらそこでは『哀しみのノスタルジア』は見つけられませんでした。見つけたのは大阪堂島にあった楽器店兼レコード店のクラシック系に強かった「ワルツ堂」でした。
 その後の購入盤の写真では特にデジャー・ソリスを感じる部分は完全に無かったですし、経歴などもまるで違います。何しろデジャー・ソリスは「失敗しない女」、離婚などはしないでしょう。
 不思議な縁として[小説のヒロイン] がキッカケという音楽以外の部分で聴き始めたという意外な出逢いで始まったシンガーでした。

中南米音楽の多くはスペイン語が主の歌で、雑誌『中南米音楽』の最後の方のページに中南米国のレコードと並んでスペイン (地域上はヨーロッパ) のレコードも一緒に売られていました。(カミロ・セストやマリ・トリニを買った記憶があります)
 マリア・クレウザの生まれはブラジル・バイーア州のエスプラナダ、原語はポルトガル語です。ただ、無類の音楽好きにとって歌の原語違いは殆ど気になりません。
 
 今でこそブラジリアン・ポップス(MPB、セルタネージョ、ホッキなど)という感じで、ポップス・ファンにもブラジルの音楽が知れ渡っていますが`70年代、`80年代のインターネットによる情報が無かった時代にブラジル音楽に興味を抱く人は、キューバやカリブ海の音楽から入っていった人とかジャズ界から知った人などしかいない時代だったと記憶しています。(わたしは後者の方でした)
 インターネットの繋がりにより欧米のポップス情報がブラジル音楽を変えて行ったのでしょう。逆輸入で欧米に伝わった感じがします。その代わり徐々に地域特有の音楽が消えて行く寂しさも生まれます。

そして、ブラジル女性のイメージ (`70年代時のわたしが持ったソレですが) はといえば、
で、`70年代ファッションはアメリカントラッド (アイビー) と並びフランスのファッションが主だったことも有り、女性イメージで云えばフランスの方はパリコレなどからも想像出来る、細身で華奢な少女風女性像を思い浮かべており、ブラジルの情報と言えばインターネット情報のない時代、リオのカーニバル時の写真位しか無くイメージ的には「お尻が大きくド派手メイクな女性群」でした。[静] VS [動]でしょうか。
 その様な中、マリア・クレウザの『哀しみのノスタルジア』を聴いて受けたイメージは静的な雰囲気で愁いを帯びた歌い方、声質も良くヴォーカリストとして聴き応えのある人だと感じました。その時既にイメージはデジャー・ソリスからは離れていましたが、サンバ・カンソンというジャンルの良さに気付きました。

 ※ ジャズ界からブラジル音楽に興味を持たせてくれたウェイン・ショーターが2023年3月2日にロサンゼルスの病院で亡くなったという訃報記事を見ました。89歳で死因は非公開の様です。偉大なミュージシャンのひとりでした。



 
 
記載順は購入順ではなくオリジナル盤の発売順掲載です

 『VINÍCIUS DE MORAES GRABADO EN BUENOS AIRES』、アルバム冠者が詩人ヴィニシウス・ヂ・モライス (モラエスという表記も) だという事で最初は買わなかった盤、ただ、マリアの経歴上ヴィニシウスとトキーニョ (Toquinho) らとのアルゼンチン興行が重要な位置を占めていたと知ってから、買った盤です。オリジナルはアルゼンチン Trova レーベル で "La Fusa" というクラブでのライヴ盤という形で出されていたらしいのですが、後で実際はスタジオ録音で疑似ライヴ処理されての発売だと判り、再発時にタイトルがクラブ名でなくブエノス・アイレスという地名に代わっていました。
ヴォーカルはトキーニョが主でマリアクレウザはサブ・ヴォーカル的な位置です。ヴィニシウス、ジョビンの代表曲 "Garota De Ipanema イパネマの娘" でもふたりで歌っています。殆どの曲はヴィニシウスがトム・ジョビンやバーデン・パウエル (ジャズ・ピアニストのバド・パウエルと紛らわしいですが、どちらも有名ミュージシャン) と組んだ曲ですが " Que Maravilha" はトキーニョとジョルジュ・ベンの共作でここではトキーニョはマリアのサブに回るヴォーカルに成っています。全曲中で一番曲として印象深いのは "Lamento No Morro" でしょうか。歌詞よりも曲の方に耳が行くのは本国人では無いためですが、さすがにトム・ジョビン (アントニオ・カルロス・ジョビン) 作のボサノヴァ・ナンバーと言えるでしょう。

 『YO, MARIA CREUZA』マリア・クレウザ単独名義の1970年発表盤、ボサノヴァの超有名曲ジョルジュ・ベンの "Mas Que Nada" トム・ジョビン (アントニオ・カルロス・ジョビン) の "Dindi" で始まる有名歌曲集。
LP時代には買えていなくて、CD時代に入ってから手にした盤です。
 録音はアルゼンチンのブエノス・アイレスにある Estudios ION (エストゥディオス・イオン) スタジオでオリジナルはTrova レーベル から発売されています。その際のタイトルは『YO...MARIA CREUZA』でスペインでの発売時に『YO, MARIA CREUZA』となった様でCD時代の再発時にも同様のタイトルで再発されていました。"Más Que Nada" 歌詞の方はジョルジュ・ベン盤と同じと思われるので (わたしには) スペイン語ではなくポルトガル語に聞こえます。"Dondi" 、この曲を最初に聴いたのは勿論、ウェイン・ショーターの有名盤『Super Nova』で、ショーターのアルバム中でも良く聴いた盤ですが、"Dondi" の前半部はフリー・ジャズ風に流れ途中から入るヴォーカルパートが印象的でした(その後またフリー・ジャズに)。その後でアストラッド・ジルベルトの歌で聴いたのでしたが、こちらの方が普通の歌物でわたしにはジルベルト・ヴァージョンがこの曲の代表盤でした(Sylvia Telles を聴いたのはかなり後)。マリアのもこのボサノヴァ風です。次に有名なのが "Corcovado" (トム・ジョビン(アントニオ・カルロス・ジョビン)作) で同じく最初にマイルス・ディヴィスのアルバム『Quiet Nights 』で知りその後アストラッド・ジルベルトの歌で歌物を聴いたというボサノヴァです。マリアの歌唱も良いです。そして "Saudade Da Bahia バイーアの哀愁"、この曲は先にLPで買っていた『EU SEI QUE VOU TE AMAR...』にも収録されていた曲なのですが、こちらの方が先に録音されていたのですね。曲としては有名で他の人の歌もある様です。珍しいアルゼンチン録音のボサノヴァ盤として良いアルバムだと思います。

 『MARIA CREUZA』、LP盤全盛時代、『Sessâo Nostalgia』を買った後、それ以前に発売されていたアルバムを買うために行ったのが。他では置いてないジャンルを多く扱っていた京都河原町蛸薬師東にあった『リバーサイド・レコード』という輸入盤店、ここで数種のマリア・クレウザ、ブラジル盤を手にしました。その中の一枚がこのLPだったのですが、タイトルが『MARIA CREUZA』、その後CD時代に移行した時に同じデザインでタイトルの違うCDをCDショップで見つけたのです (タイトルが『VOCÊ ABUSOU』)。LPの曲目を覚えていなく、別のアルバムだと思い購入したのですが、後で判明した事。アルゼンチン盤オリジナルタイトルが『VOCÊ ABUSOU』、ブラジル盤最初のタイトルが『MARIA CREUZA』で内容は同じだったという事。原盤がアルゼンチンのレーベル なのでブラジルでもCD時代には『VOCÊ ABUSOU』で再発したのでしょう。録音はブエノス・アイレスの IONスタジオで`71年9月、`72年1月との事です。タイトル曲 "Você Abusou (「おもちゃにしないで」 という邦題)" が一番のヒット曲で、作者はアントニオ・カルロス & ジョカフィ (Antônio Carlos e Jocafi) のデュオ・コンビ。それぞれの本名はAntônio Carlos Marques Pinto と José Carlos Figueiredo でジョカフィの方はJo+ca+fi と頭部分を並べた模様です(José の発音はスペイン語系ではホセですが、ブラジル系ポルトガル語ではジョゼと発音する様です)。アントニオ・カルロス・マルケス・ピントの方は`60年代後半にマリア・クレウザと結婚した元夫 (`81年頃に離婚している模様)。この二人はソング・ライターとしてだけでなくデュオで歌手活動もしているコンビです。他にもこのLPではA-4、A-6、B-1も書いています。その中では "Mas Que Doidice" がブラジルでヒットした "Você Abusou" よりもわたしは気に入っています、というかこのアルバム中一番のお気に入り。若干フレンチ・ポップスの香りがします。"Foi A Noite"、"Insensatez お馬鹿さん" はボサノヴァの父と呼ばれているアントニオ・カルロス・ジョビン (Antônio Carlos Jobim 欧米では Tom Jobim の名で知れている)が作曲(歌詞は別)ナンバー。特に後者の歌詞はヴィニシウス・ヂ・モライス (Vinicius de Moraes) で有名な曲。

VINÍCIUS DE MORAES GRABADO EN BUENOS AIRES YO, MARIA CREUZA MARIA CREUZA (RGE)
VOCÊ ABUSOU
VINÍCIUS DE MORAES GRABADO EN BUENOS AIRES
Vinícius De Moraes Con Maria Creuza Y Toquinho
original LP 1970 as VINICIUS DE MORAES EN "LA FUSA"
CD Inter CD 45005 (Brazil) 2000

1. Copa Do Mundo
2. A Felicidade
3. Tomara (Ojalá)
4. Que Maravilha
5. Lamento No Morro
6. Berimbau / Consolação
7. Irene
8. Canto De Ossanha
9. Garota De Ipanema
10. Samba Em Prelúdio
11. Catendê
12. Valsa Da Tunisia
13. Eu Sei Que Vou Te Amar
14. Minha Namorada
15. Se Todos Fossem Iguais A Você
YO, MARIA CREUZA
original LP 1971 as YO...MARIA CREUZA
CD Alfa Records AFCD-2 (Swizerland) 1990

1. Más Que Nada
2. Dindi
3. Chega De Saudade
4. Por Causa De Você
5. Das Rosas
6. Chove La Fora
7. Cantador
8. Saudade Da Bahia
9. Corcovado
10. Maria Vai Com As Outras
11. Estrada Do Sol
12. Marina

 
MARIA CREUZA
1972
LP RGE - 303.0014 (Brazil)
CD Inter CD 45003 (Brazil) 2000
   as VOCÊ ABUSOU

A
1. De Onde Vens (De Donde Vienes)
2. Você Já Foi À Bahia (Usted Ya Fue A Bahia)
3. Eu E A Brisa (Yo Y La Brisa)
4. Queixas (Quejas)
5. João Valentão
6. Mas Que Doidice (Que Locura)
B
1. Ossain
2. Foi A Noite (Fue La Noche)
3. Morena Flor
4. Carinhoso
5. Insensatez
6. Você Abusou

 
 『EU SEI QUE VOU TE AMAR...』、全曲アルゼンチン Trova レーベルに録音されていた音源で、CD時代に成って買った上記の『VINÍCIUS DE MORAES GRABADO EN BUENOS AIRES』『YO, MARIA CREUZA』と同じモノでした。ましてやCDで買ったデザインはブラジルLP盤と全くの別物写真だった為に二重買いに成っていました。
邦盤のタイトルは『愛の予感』に成っています。

 『EU DISSE ADEUS』、はRCAレーベルと契約した記念すべき最初のアルバム。わたしの購入盤はブラジル盤でしたが邦盤が`75年に『リオの黒バラ』と言った魅力的なタイトルが付けられていました。内容は同じかと思いきや、`74年11月二マリア・クレウザが日本で行われた「世界歌謡祭」に参加その時に歌った "Que Diacho de Dor 恋の痛手" (ライヴではありません)という曲が入れられてオリジナル盤 B面4曲目のメドレー曲がカットされいました。(当時のLP収録時間の制限からやむなしだったのでしょうが)そこでその「世界歌謡祭」で歌ったシングル盤 (EP欄に記載) を購入はしたのですが、その後CD時代に成り日本編集ベスト盤(下記 RCA R32P-1091)に収録されました。。
 サンバ・カンソンと言われるジャンルでしょうが、サンバ・ダンスを思わせる「太陽の下」のイメージとは反対に夜のムードを漂わせているしっとりした歌唱でマリア・クレウザの特徴を生かした一枚です。日本盤でオミットされたB-4の四曲から成るメドレーは作曲陣に日本で知られていない人が多くアントニオ・カルロス&ジョカフィ作の "Que Diacho De Dor" に替えられたのでしょうが、全体のイメージでは合っていた曲だとは思います。アントニオ・カルロス&ジョカフィの曲はブラジル盤で三曲、邦盤で四曲ですが、一番気に入ったのは "Desespero" です。「絶望」という意味らしいですが、人生の絶望感じゃなく恋の絶望感で何となく前向きな明るささえ感じる曲です。あと "A Noite Do Meu Bem あなたと過ごす夜" はジャズ界でも知られたドローレス・ドゥラン (Dolores Duran) の自作・代表曲でドローレス最高の歌唱曲です。

 『SESSÃO NOSTALGIA 哀しみのノスタルジア』、今も一番好きなマリアのアルバムで最初に買ったアルバムになります。トップの "Para Falar A Verdade 真実を話せたら" を聴いて即、気に入ったのを想い出します。"Luz Negra 暗闇の中の私 / O Sol Nascerá いつか光が" も気に入った曲でサンバ・カンソンの世界に導いてくれたアルバムであり、歌手です。 "De Conversa Em Conversa けんか話" も印象深い曲でその後のアルバムでも数回収録されています。タイトル曲 "Sessão Nostalgia" は当時の旦那さんアントニオ・カルロスとジョカフィのコンビ作、バック演奏が、他の人の作品よりも当時としては新鮮だったのでしょうと思えるアレンジです。
 "Com Açúcar, Com Afeto 心をこめて" はサンバ・カンソンらしい曲でマリア・クレウザの声質と歌唱力に引き込まれる素晴らしい一曲です。彼女の声質は安心感がある穏やかな気持ちにさせてくれる声です。
 余談ですが、若い頃からラジオ・リスナーとして音楽を聴いてきた人達には、テレビ世代よりも声質に拘りが必ずあると思います。人それぞれ好みの問題もあるでしょうが、最近テレビで、政治家や芸能人が不祥事を起こしたときに、会見会場に向かう途中、無言で歩くと判っているのに執拗に「何故〇〇したのですか!」「誰々にひと言ありますか!」などと叫ぶリポーターの声の中に、寒気がする様な嫌な声質に出くわす事が時々あります。
 HR/HMバンド・ヴォーカルのハイトーン・ヴォイスやオペラのソプラノ域・ヴォイスなどは好きなのに. . .です。
 "Com Que Roupa 踊りに行きましょう" は`70年代のブラジル音楽を堪能できる一曲。昨今のブラジリアン・ポップスには最早残っていない「ブラジル音楽らしさ」を持った印象深い曲です。作曲はノェーウ・ホーザ (Noel Rosa) という`30年代から活躍しているブラジルのSSWの曲。好きな曲です。

EU SEI QUE VOU TE AMAR... (RGE)
EU SEI QUE VOU TE AMAR...
EU DISSE ADEUS SESSÃO NOSTALGIA
EU SEI QUE VOU TE AMAR...
(Maria Creuza, Toquinho / Vinicius)
1972
LP RGE - 303.0011 (Brazil)
CD Alpha RGE-5 (Japan) 1988

A
1. Catendê
2. Se Todos Fossem Iguais A Você
3. A Felicidade
4. Que Maravilha
5. Por Causa De Você
6. Saudade Da Bahia
B
1. Eu Sei Que Vou Te Amar
2. Minha Namorada
3. Samba Em Prelúdio
4. Estrada Do Sol
5. Chega De Saudade
6. Irene

 
EU DISSE ADEUS
1973
LP RCA Victor 103.0077 (Brazil)

A
1. Feijãozinho Com Torresmo
2. Apelo  
3. Canção Da Volta
4. Janelas Azuis
5. Nossos Momentos
6. Desespero
B
1. Bobo Feliz
2. A Noite Do Meu Bem
3. Chão De Estrelas
4. Obsessão/ Não Me Diga Adeus / Poisé/ A Flor E O Espinho
5. Simplesmente
6. Eu Disse Adeus


SESSÃO NOSTALGIA
original LP 1974
LP RCA RVP-6307 (Japan)

A
1. Para Falar A Verdade
2. Vingança
3. Luz Negra / O Sol Nascerá
4. Duas Contas
5. De Conversa Em Conversa
6. No Meio Da Festa
7. Sessão Nostalgia
B
1. Desmazêlo
2. Com Açúcar, Com Afeto
3. Ninguém Me Ama
4. O Que Tinha De Ser
5. Pé De Valsa
6. Com Que Roupa
7. Pra Dizer Adeus
 
 



 『E OS GRANDES MESTRES DO SAMBA』、日本では『夜明けのサンバ』の邦題で出ていました。確かにマリアの歌声に「真昼のサンバ」のイメージは無いですね、太陽が出たとしてもまだまだ遠い位置にある夜明けのイメージです。サンバ楽曲に全く詳しくないので、どの曲もが似ていると感じてしまいます。赤道付近の地域で発達した音楽の多くは多種多様の打楽器が中心でリズム主体の音楽というイメージを持っています。ジャズやロックの持つスィング・ビート、アフター・ビート・リズムでなく独特の突っかかる様なシンコペーションが生み出す一拍、三拍強で慣れないと踊りにくい独特のリズムです、好きな人にはクセに成るのでしょうが、個人的にはバック・ビートリズムが好みです。アルバム制作意図には納得です。

 『MARIA CREUZA (Participacao Especial: Toquinho E Vinicius)、マリア・クレウザが主でトキーニョ、ヴィニシウスがゲスト扱いのタイトルですが、実際はトキーニョ、ヴィニシウスが主で吹き込まれたアルゼンチン録音、Trova からの『VINICIUS DE MORAES EN "LA FUSA"』と翌年の同レーベル盤『YO...MARIA CREUZA』からの抜粋編集盤でした。
この盤は「ジャンクショップ」という京都では珍しいサルサなどのジャンルを専門に扱っていたレコード屋さんで入手しました。

 『MEIA-NOITE』、このアルバムは邦盤タイトルが『真夜中のマリア』と付けられて結構話題に成っていたと記憶しています(原題は「真夜中」のみ)。"Tortura De Amor"、"A Distância"、"Meia Noite あなたと過ごす夜" (再録) など夜の雰囲気を醸し出す歌唱はさすがでマリア・クレウザの良いところです。しっとりタイプとは逆でボサノヴァ調の "Outra Vez Bahia" が、これまた印象深い曲で好きです。この曲は日本で「もう一度バイーアへ」と邦題が付けられてシングル盤発売されています(下記)。`79年再来日での「世界歌謡祭」参加曲がB面扱いです。
 ただこのカバー写真、ヤケに頬が細く成っています、一時整形疑惑が出ていた様ですが真相は?




 
E OS GRANDES MESTRES DO SAMBA MARIA CREUZA (Participacao Especial:) MEIA-NOITE
E OS GRANDES MESTRES DO SAMBA
1975
LP RCA Victor 103.0156 (Brazil)

A
1. Chega Pra Lá
2. Rala Rala
3. Amor De Mâe
4. Exaltaçâo À Tiradentes (Tiradentes)
5. Pouco Importa
6. Soldado Do Amor
B
1. Cordas E Correntes
2. Quem Lucrou Fui Eu
3. O Namoro De Maria (Partido Alto)
4. Alhos E Bugalhos
5. Madrugada
6. A Timidez Me Devora
MARIA CREUZA
(Participacao Especial: Toquinho E Vinicius)
1977
LP RGE - 303.0044 (Brazil)

A
1. Garota De Ipanema
2. Dindi
3. Canto De Ossanha
4. Mas Que Nada
5. Corcovado
6. Tomara
7. Saudade Da Bahia
B
1. A Felicidade
2. Que Maravilha
3. Chega De Saudade
4. Samba Em Prelúdio
5. Marina
6. ...Das Rosas
7. Lamento No Morro

MEIA-NOITE
1977
LP RCA Victor 110.0014 (Brazil)

A
1. Dom De Iludir
2. Onde Anda Você
3. Palavras Cruzadas
4. Outra Vez Bahia
5. Castigo
6. Fim De Noite
B
1. Otália Da Bahia
2. Tortura De Amor
3. O Amor Em Paz /
  Brigas Nunca Mais /
  Voce E Eu /
  O Nosso Amor
4. Tetê
5. A Distância
6. Meia Noite

 
 『DOCE VENENO』、このアルバムは普通にジャズ系のフュージョン・ヴォーカルのアルバムと思って聴いてもなんら違和感はあまりありません。作者は (ブラジル音楽界に詳しくないわたしとしては) 知らない人が多く、お馴染みのアントニオ・カルロス & ジョカフィ作はトップ曲のみです。この曲のみはやはりブラジルの哀愁を感じます。
その次が "Tudo Se Transformou" でしょうか。Paulinho da Viola (パウリーニョ・ダ・ヴィオラ) という名前だけは聴いたことある歌手作です。
 全体的にソフト系同タイプの曲ばかりで地味過ぎて繰り返し聴くにはキツイ感じがします。それと30代半ばの女性特有の媚びる姿勢アリアリの写真使用が私的には気に入らないカバーデザインです。邦盤が出た際のタイトルは「甘い毒薬」でした。

 『PECADO』、こちらはマリア本来のサンバ・カンソンをかなり感じるアルバムに成っています。カバーデザインのポートレート風写真は良いです。マリア・クレウザ全アルバム中でも大好きなアルバムのひとつです。作者名にトキーニョの名がみえるのが "Tempo De Voar" と "Valsa Do Bordel" の二曲、どちらも良い曲です。ギターでトキーニョのクレジットも見られます。あと "Sonho Meu"、"Começaria Tudo Outra Vez"、"Medo De Amar Nº 2" 等が素晴らしいです。

 『MARIA CREUZA 邦題:ポエマ』、A面は囁くように歌うスロー・ナンバー主体で確かに中南米風サウンドではありますがブラジル色はあまり感じません。都会の淋しさを感じてしまいますが特に印象に残る曲は有りません。B面トップ "Odum" はアップテンポのサンバ系ですがイマイチな感じです。"LUA DE SAO JORGE サン・ジョルジの月" もアップテンポ乍らマリアには合っていない感じです。"Escravo da Alegria 喜びの奴隷" はトキーニョ作ですが、この曲もそこそこでラストの "O Poeta e o Cobertor 詩人と毛布" でやっとマリア・クレウザの歌として満足できる曲でした、作者はアントニオ・カルロス & ジョカフィ。

DOCE VENENO PECADO MARIA CREUZA (RCA)
DOCE VENENO
1978
LP RCA Victor 103.0251 (Brazil)

A
1. Algemas
2. Espraiado
3. Trocando Em Miúdos
4. Último Desejo
5. Quase
6. Mal Me Quer
B
1. Saudade Vadia
2. Folha Morta
3. Vídeo-Tape
4. Tudo Se Transformou
5. Caminhemos
6. Doce Veneno
 
PECADO
1979
LP RCA Victor 103.0306 (Brazil)

A
1. Boleríssimo
2. Tempo De Voar
3. Café Da Manhã
4. Amora
5. Sonho Meu
6. Começaria Tudo Outra Vez
B
1. Valsa Do Bordel
2. Folhetim
3. Medo De Amar Nº 2
4. Falso Brilhante
5. Graças A Deus
6. De Você Eu Gosto

MARIA CREUZA
original LP 1980
LP RCA RPL-8087 (Japan) 1981

A
1. Mais Que A Tua Ausência
2. Na Paz Do Seu Sorriso
3. Esse Homem
4. Contragosto
5. Algo Contigo
B
1. Odum
2. Tá Faltando
3. Lua De São Jorge
4. Escravo Da Alegria
5. Ruínas
6. O Poeta E O Cobertor





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 『MARIA CREUZA, TOQUINHO & VINICIUS DE MORAES ボサ・ノヴァの真髄』、まだRCAから正式なソロ・デビューする前にヴィニシウスとトキーニョのお供でアルゼンチンのTrova レーベルに吹き込んだ曲の日本独自編集物。ボサノバ系ナンバーが主で、CDでオリジナル形式盤を買うまでは結構好きなアルバムでした。

 『POÉTICO ボッサ ポエチカ』、ボサノバ界の大御所詩人ヴィニシウス・ヂ・モライスが亡くなった後に作られたヴィニシウス作品集。マリアの才能を見出してくれた恩人のひとりで、30歳ほど離れていながら「愛されていた」という程に可愛がられて貰えた人と言われている詩人の作品集です。(ヴィニシウスは恋多き男性で離婚・結婚を7〜8回繰り返したそうです)
 A-1,A-3,B-6 がトム・ジョビンとの共作で代表作。A-7,B-7 がバーデン・パウエルとの共作、A-2がトキーニョとの共作。特に "Água De Beber おいしい水" と "Garota De Ipanema イパネマの娘" は外せない感じです。他の曲も全体的に良いので、歌に聴き入ること出来ます。このLPを買ったのは京都新京極三条下ルにある「詩小路」ビルという京都らしい名前のファッションビルで別店舗古着を見に行ったついでに偶然見つけたレコード店「優里奈・詩小路店」で市内に何店舗かを展開していたチェーン店のひとつだったのですが、アナログ・レコードからCD全盛に変わった頃から徐々に撤退して行った様なのですが、この「詩小路店」の後に「リバーサイドレコード」が移ったという噂も聞きましたが、CD時代には連続でいろいろなお店を回れるので大阪へ再び出向く事多くなりました。(なにしろレコード店の袋にはほぼ完全に大きくレコード店の店名が記されていますので、同系統のジャンルを扱うお店に続けて行きにくかったのです)そして`05年頃からはネット販売店中心に成ってしまいました。

 『PAIXÃO ACESA』、調べたところによると`80年代に発売されたマリアのLP盤は、 MARIA CREUZA (1980) 、SEDUÇÃO (1981) 、POÉTICO (1982) 、POR SIEMPRE (1983)、PAIXÃO ACESA (1985) 、PURA MAGIA (1987) 、DA COR DO PECADO (1989) 、COM AÇÚCAR E COM AFETO (1989) と8枚出ていたのです。(南米では`80年代後半でもCD盤発売は未だだった様です)
 その中で同年若しくは数年遅れででも日本発売されたのはMARIA CREUZA (1980) 、POÉTICO (1982) 、DA COR DO PECADO (1989) の三種だけ、代わりにアルゼンチン録音の旧録編集盤と独自のベスト盤という日本独自盤が二種出ていました。
 COM AÇÚCAR E COM AFETO (1989) だけはスイス盤で入手しましたが、なんと`85年盤と`87年盤の二作が突然2016年に成って (株)ウルトラ・ヴァイヴから邦盤発売が成されました。21世紀に入ってから三度目のブラジル音楽ブーム(新世代MPB、かなりアメリカナイズされた曲が中心)が起こった様で、その最中にひっそりと紛れて発売された感じです。
 このマリアの二種 (PAIXÃO ACESA、PURA MAGIA) は Arca というブラジルの極小レーベルからの発売だった為、当時の邦盤発売は仕方なしだったのでしょうが、SEDUÇÃO (1981)、POR SIEMPRE (1983) は RCA 原盤なので、国内発売可能でしたが、余程日本受けしないと判断された作品だったと推測できます。`80年の『MARIA CREUZA』はかなりのガッカリアルバムでした。
 その上、`80年代に投入した頃はプロモーション用のミュージック・ビデオが大量に出回った時期でMTVにより欧米のポップス系が日本の洋楽シーンを席捲していた時代です。ブラジル音楽の売れ行きは期待薄だったとも想像できます。
 で、このアルバム『PAIXÃO ACESA』の内容は、『POÉTICO』等の流れを汲む静かなサンバ・カンソンが中心です。気に入ったのは "Pra Esfriar A Cabeça" (作曲者のルイズ・カルロス・ダ・ヴィラ (Luiz Carlos da Vila) もヴォーカルに参加して二人で歌っています)、 "Só Pra Descansar" (ヴェヴェ・カラザンス (Vevé Calazans) という人の作品でボサノバ風味が多分に有り好きです)、 "Fragmentos" (ボサノバ・ギターリスト、ヘジナウド・ベッサ (Reginaldo Bessa ) の曲なのでこの曲もボサ風です) 、そして "Tua" (カルロス・コラとイヴァン・ボッチセリの (Ivan Btticelli/Carlos Colla) 共作曲でどこかヨーロッパ風哀愁を帯びた聴き応えのあるバラード) の三曲。他はイマイチな感じです。ラストだけがアップテンポでポップ調でした。

MARIA CREUZA, TOQUINHO & VINICIUS DE MORAES POÉTICO PAIXÃO ACESA
MARIA CREUZA, TOQUINHO & VINICIUS DE MORAES
original LP ( Japanese Compilation) 1981
Seven Seas K23P-164 (Japan)

A
1. Maria Vai Com As Outras
2. Dindi
3. Mas Que Nada
4. O Cantador
5. Chove Lá Fora
6. Lamento No Morro
B
1. Marina
2. ...Das Rosas
3. Corcovado
4. Tomara
5. Garota De Ipanema
6. Canto De Ossanha
POÉTICO
1982
LP RCA RPL-8177 (Japan)

A
1. Chora Coraçâo
2. Tarde Em Itapoã
3. Água De Beber
4. Lamento
5. Rancho Das Namoradas
6. Valsinha
7. Cançâo Do Amor Ausente
B
1. Marcha Da Quarta-Feira De Cinzas
2. Berimbao
3. Samba De Orly
4. Cançâo Do Amanhecer
5. Sem Mais Adeus
6. Garota De Ipanema
7. Cançâo De Ninar Meu Bem

PAIXÃO ACESA
original LP 1985
CD Arca CDSOL-6202 (Japan) 2016

1. Estrela Cadente
2. Nas Sombras Da Vida
3. Sessões De Cinema
4. Nó De Marinheiro
5. Vontade
6. Pra Esfriar A Cabeça
7. Veleiro Branco
8. Só Pra Descansar
9. Fragmentos
10. Milagre De Amor
11. Tua
12. Maliciosa

* track 6
  duet with Luiz Carlos da Vila



 『PURA MAGIA』、『PAIXÃO ACESA』同様 (株)ウルトラ・ヴァイヴが2016年に発売していた「ブラジリアン・ミュージック・ラヴ・アフェァー」シリーズ中の一枚になります。原盤はこちらも Arca 。先ず驚いたのは先ずカバー写真です。ロック創成期`60年代後半のロック・バンド、the Great Society→Jefferson Airplane のリード・ヴォーカリスト、グレイス・スリックが`70年代以降に Jefferson Starship→Starship とバンドを変えて行った時期の`80年代風貌とかなり似ていたのです。グレースもマリアもこの後、アレサ・フランクリンやマライア・キャリー、ブリトニー・スピアーズ等と同様にふくよか女性へと変貌していきます。他にもいろいろ思い浮かぶ人も居ますが、皆さんは歌手です、歌が第一ですので気にはなりません。
 映画女優 (男優もですが) は演技上セリフ使いが第一ですが、映像も付いて回るので後姿のみで演技したりもしなければならず全体が大事な要素です。その為、年齢を経ても体型に変化のない人が殆どです。その例で行くとわたしが別ページも持っているフランスシルヴィ・ヴァルタンの姿が歌手なのにいつまでも細身だこと。さすがショー・ビジネス界で生きてきたフランス女性だと驚きます。

 で、このアルバムの内容です。"Ifá (Um Canto Pra Subir) " は今までのアルバム内には登場しなかったリズムで作られた曲です。`80年代に入ってから生れたアシェー (Axe) というジャンルのリズムでサンバとレゲエを融合させた「サンバヘギ」というリズムらしいです。私的にはレゲエは好きなジャンルですのですんなり入ってきました。この曲をヒットさせたのは「アシェー・クィーン」と呼ばれるマルガレッチ・メネーゼス (Margareth Menezes) らしいですが、マリアのヴァージョンも凄く良いです。2曲目 "Luz" も良い曲です。デュエットでシヴーカ (Sivuca) が歌っていて作曲は彼の奥方グロリア・ガデーリャ (Glorinha Gadelha) とトニ・ガデーリャ (Toni Gadelha) のコンビ。古い時代のブラジル音楽らしさを含みながらも新しさをも備えた魅力的な曲です。
 "De Tentação A Cantada" も以前のマリアならば歌っていなかった様な選曲です。わたしにはフランス歌曲に聞こえました。ワンド (Wando) というブラジル若手SSWとワンドのお嫁さんホーザ (Rose Marie) の共作、ワンドがヴォーカルで参加しています。以上曲の良さが目立ったいましたが、 "O Tempo E As Rosas" は本来の歌唱に近い選曲で、`70年代のマリアに近いです。

 『MARIA CREUZA (Best Collection)』、日本編集盤でRCAに録音された曲から選曲されているとの事です。
持っているアルバムに含まれていない曲 (1曲目、10曲目、17曲目とシングル盤曲の8曲目) も数曲有り、貴重なアルバムです。18曲目は`70年Trova レーベル録音物は数種アルバムにありましたが、この`81年録音ヴァージョンは初めてです。特に "Frenesi" はラテン楽曲の中で一番最初に好きになった曲で忘れられない曲です。作曲はアルベルト・ドミンゲス (Alberto Domínguez)、ここでの作詞はリーナ・ペイシ (Lina Pesce)。ちなみに英語歌詞はレナード・ホイットカップ (Leonard Whitcup) 。
 キッカケはジャズ・ヴォーカルを色々聴いていた時に出会ったJulie London の『Latin in a Satin Mood』です。大好きな曲に成りジュリー・ロンドンの他の中古LPを探して大坂の [LPコーナー2] で『Whatever Julie Wants』を手にしていたら、のぞき込んできたオジサンがいました。なんとその人、本業お医者さんでありながら「スイングジャーナル誌」に時折執筆していた粟村政昭さんでした (話かけられてはいません)。大阪在住のコレクターだとは知っていましたが、[驚いた経験]とも繋がっている "Frenesi" です。英語歌詞でジャズ・スタンダード化もしていますが、多くのジャンルのシンガーに歌われている曲ですね、持っている歌手で今思いつくのはヨーロッパのカテリーナ・ヴァレンテ、R&B界のベン E.キング、そしてうちのページでも記しているリンダ・ロンシュタッド。カテリーナとベンは好きな歌手ですがアップテンポでラテン色無のボレロ・ムードを感じられず気に入りませんでした、リンダのはスローすぎる感じがし、これまたボレロのムードがせずまずまず状態。、マリア・クレウザはかなりジュリー・ロンドンに近い歌唱で気に入っています。只わたしにとってこの曲のベストは Julie London ヴァージョンですが。
 マリアの録音は日本未発売のアルバム『SEDUÇÃO』(未入手) 収録の様でしたのでこのベスト盤はホント有難いです。
 "Todos Se Transformou みんな変わってしまった" は今まで未収録だった曲で`78年頃に録音されたとの事。パウリーニョ・ダ・ヴィオラ (Paulinho da Viola) 作で`70年にヒットしたとの事。近年ではジジ・ポッシ (Zizi Possi) ヴァージョンが人気の様です。"Luz Negra / O Sol Nascerá" はメドレー形式・ナンバーで`74年録音と記されています。『SESSÃO NOSTALGIA』録音時の音源で、アルバム未収録で終わったのか本国でシングル盤発売されたのかは知りません。

 『DA COR DO PECADO』、帯に「当アルバムは、16作目にあたり. . .」と記されています。これはアルゼンチンでの録音が含まれずRCAでの『EU DISSE ADEUS』(1973) から数えてという事に成る様です。原盤はブラジルの Som Livre というレーベルで`88年8月〜9月の録音物。
 邦題が『砂の記憶』と付けられたことで、独自に考えられたカバー写真の様ですが、これは邦盤最初の時のカバーデザインで、オリジナルや邦盤再発時の物と違っています。あわや間違ってオリジナルデザイン盤を買いかけてしまいそうでした。ちなみにタイトル曲8曲目の邦題は "罪の色に染まって" と付けられています。全11曲中、2曲のみが1タイトル楽曲で残りの9曲はすべてメドレー形式に成っていました。
 3曲目に成っている "Como Uma Onda 波のように / Certo Alguém 誰か" は`80年代に入ってからニューMPB界で人気を博したルル・サントス (Lulu Santos) という歌手が書いた曲のメドレー、可愛い曲に聞こえます。 "Eu Não Existo Sem Você あなたがいなければ / Eu Sei Que Vou Te Amar 愛の予感 / Se Todos Fossem Iguais A Você みんながあなたのようなら" はトム・ジョビンとヴィニシウス・ヂ・モライスとの共作三曲メドレー。タイトル曲 "Da Cor Do Pecado 罪の色に染まって" 以後の4曲はすべて古い時代のブラジル・ソングらしくニューMPB全盛時期に、あえて選ばれた曲たちの様に思えます。特にラストの "Gentle Humilde 素朴な人たち / Folhas Seca 枯葉" などは、確かに「良き時代の懐かしき歌」という雰囲気を確実に感じます。アメリカナイズされてきているブラジル音楽界に警告を出しているような感じでしょうか? 日本で久方ぶりにマリアのオリジナルアルバムを発売した事、そしてカバーにマリアの写真を使わなかった事、その意図を感じられるアルバムです。
 「`70年代マリア・クレウザがソロ・デビューした頃を思い出して欲しい」といった思いを感じました。




 
PURA MAGIA MARIA CREUZA (Best Collection) DA COR DO PECADO
PURA MAGIA
original LP 1987
CD Arca CDSOL-6227 (Japan) 2016

1. Ifá (Um Canto Pra Subir)
2. Luz
3. Pura Magia
4. Quando Amanheceu
5. Coração Vira-Lata
6. De Tentação A Cantada
7. Sou Rei
8. Mistura De Raças
9. O Tempo E As Rosas
10. Delicado Perfume

* track 2
  duet with Sivuca
* track 2
  duet with Wando
MARIA CREUZA (Best Collection)
1987 (Japanese Compilation Album)
CD RCA R32P-1091 (Japan)

1. Todos Se Transformou
2. Onde Anda Você
3. Outra Vez Bahia
4. Para Falar A Verdade
5. De Conversa Em Conversa
6. Apelo
7. Madrugada
8. Diacho de Dor
9. Café Da Manhã
10. Frenesi
11. A Noite Do Meu Bem
12. Com Que Roupa
13. Sonho Meu
14. O Poeta E O Cobertor
15. Escravo Da Alegria
16. Lamento
17. Luz Negra / O Sol Nascerá
18. A Felicidade
 
DA COR DO PECADO
original LP 1989
CD CBS SONY CSCS-5189 (Japan) 1990

1. Faz Parte Do Meu Show
2. Como É Grande O Meu Amor Por Você / Não Quero Ver Você Triste
3. Como Uma Onda / Certo Alguém
4. Marina / Nem Eu
5. Rosa Morena / Falsa Baiana
6. Eu Não Existo Sem Você / Eu Sei Que Vou Te Amar / Se Todos Fossem Iguais A Você
7. Simples Carinho / Por Causa De Você / Tortura De Amor
8. Da Cor Do Pecado
9. Fim De Caso / Castigo
10. Camisa Amarela / Faceira
11. Gentle Humilde / Folhas Secas
 




3



 
 『COM AÇÚCAR E COM AFETO』はスイス盤で購入しましたが、本国ブラジルで`89年に発売されたベスト形式の編集盤でした。『EU DISSE ADEUS』から4曲、『SESSÃO NOSTALGIA』から2曲、『MEIA-NOITE』から3曲、『DOCE VENENO』から2曲、『PECADO』から1曲と全盛期`70年代のRCA音源からの曲です。日本盤ベストと4曲しかダブリがないのは選曲がお国柄を表しているのでしょうか?(南米でCD再生機が浸透したのは`92〜`93年頃の様なので収録数はLP盤に合わせられています、`89年頃はLP,CD両形態同時発売期です)
 『EU DISSE ADEUS』の日本盤で "Que Diacho De Dor 恋の痛手" と挿しかえられいた、オリジナル盤の楽曲、"Obsessão/ Não Me Diga Adeus / Poisé/ A Flor E O Espinho" がCD音源で収録されていました。

 『TODO SENTIMENTO』、`89年に本国で発売された Som Livre レーベル盤が国内発売されていたのにその2年後に発売された本作の日本発売はされませんでした。『DA COR DO PECADO』の売れ行きが芳しくなく見送られたのか、CBS Sony から Som Livre の販売権が外れたのかのどちらかでしょう。(注:2021年にSonyグループが再取得した様です。)
 それが突然2011年、邦盤が欧米のロック系主に発売している、ワーズ・レコードから発売されました。(同時発売で『『DA COR DO PECADO』もオリジナルカバーで再発されましたが、流石にダブリ買いはしませんでした) ロック畑会社が「何故ブラジルのレーベルと?」と思いましたが確かに21世紀に入ってからのブラジル音楽はかなりロック化していました。
 で、マリアのこのアルバムはと言いますと、`90年頃の録音なので決してロック化はしていません。曲のアレンジ、バック演奏などはさすがに`70年代風とは言えませんが、決して売れ線狙いではない作りが好感持てて、AOR系をブラジル風に仕上げた感じです。その曲調の代表作がトップの "Casinha Branca" で、Gilson e Joran というコンビの作曲で`90年代のブラジルポップス界でよく見るコンビの様です。また ジウソン (Gilson) は個人でも他の人とのコンビででも多くの曲を作っている様です。 "Casinha Branca" はマリアにピッタリの曲調で良い曲だと思います。"Chuvas De Veräo" は`40年代のヒット曲で古い曲ながら`70年代的なアレンジでこの曲も似合っています。"A Noite Do Meu Bem / Todo O Sentimento" はタイトル曲とのメドレー形式に成っている前半曲 "A Noite Do Meu Bem あなたと過ごす夜" はマリア自身何度も吹き込んでいる曲、そして続く "Todo O Sentimento" はシコ・ブアルキ (Chico Buarque) `80年代のヒットと新旧の曲でつないでいます。
次の "Vingança / Você Abusou" もメドレーで後半の "Você Abusou おもちゃにしないで" はアントニオ・カルロス&ジョカフィとマリアでヒットした曲、前半はルピシニオ・ロドリゲス ( Lupicínio Rodrigues) `50年代のヒット曲、「Vingança」の意味を調べたら「嫉妬」らしいです。悲しい恋の歌だと知って聴くとさすがの歌唱だと感じます。"Doce Safadeza" は先述のジウソン (Gilson) の曲、フレンチ・ポップス風な曲で何故か声がやたら可愛く聞こえます。"Dia Branco / Dona De Minha Cabeça / Moça Bonita" の3曲は`80年代に本国で人気を博したSSW ジェラルド・アゼヴェード (GERALDO AZEVEDO) 楽曲のメドレー、完全に当時のブラジリアン・ポップス調です。
 カバーデザインはイマイチでしたが、内容は新旧あり楽しめました。

 『LA MITAD DEL MUNDO/A METADE DO MUNDO』、数少ない`90年代二作目のアルバムで `99年9月頃、リオでの録音の様ですが発売はスペインのレーベル Zanfonia からです(本国レーベルでの発売は未だの模様)。バック・ミュージシャンは知らない人が多いですがブラジルのミュージシャンでCDブックレット内に録音時の写真が数点載っています。"Estambul" の作詞のクレジットにマリア・クレウザの名がみえます。トップはいきなりスペインのガブリエル・ソフィーニャ (Gabriel Sopeña) の曲で始まりますが、全体的にはブラジルを感じることが出来る選曲構成です。"Arrastao" はブラジルでのタイトルが "Arrastäo 地引き網" でエドゥ・ロボとヴィニシウス・ヂ・モライス (Edu Lobo, Vinicius de moraes) コンビの曲でラストの "Samba Em Prelúdio" もバーデン・パウエル&ヴィニシウス・ヂ・モライス作でトッキーニョがヴォーカル・デュエットで付き合っていたり、やはりブラジルを感じます。
 曲として一番気に入ったのはラテン音楽っぽい "Gema" でした。ブラジルのSSW,カエターノ・ヴェローゾ (Caetano Veloso) の曲なのですが、印象深いメロディーの繰り返しで最後にサックスの音でジャズっぽく仕上げられた構成はニクイです。


COM AÇÚCAR E COM AFETO TODO SENTIMENTO LA MITAD DEL MUNDO/A METADE DO MUNDO
COM AÇÚCAR E COM AFETO
original LP 1989
CD Milan Sur CD CH 525 (Switzerland) 1990

1. Com Açúcar, Com Afeto
2. Onde Anda Voceê
3. Obsessão/ Não Me Diga Adeus / Poisé/ A Flor E O Espinho
4. A Noite Do Meu Bem
5. De Conversa Em Conversa
6. Caminhemos
7. Apelo
8. Dom de Iludir
9. O Amor Em Paz / Brigas Nunca Mais/ Você E Eu / O Nosso Amor 
10. Folha Morta
11. Começaria Tudo Outra Vez
12. Nossos Momentos

TODO SENTIMENTO
original LP 1991
CD Som Livre / RGE VQCD 10242 (Japan) 2011

1. Casinha Branca
2. Rio Antigo (Como Nos Velhos Tempos)
3. Doa A Quem Doer
4. Chuvas De Veräo
5. A Noite Do Meu Bem / Todo O Sentimento
6. Vingança / Você Abusou
7. Na Baixa Do Sapateiro
8. Doce Safadeza
9. Folha Morta
10. Dia Branco / Dona De Minha Cabeça / Moça Bonita
11. Dois Pra Lá, Dois Pra Cá / O Mestre Sala Dos Mares
 
LA MITAD DEL MUNDO/A METADE DO MUNDO
1999
CD Zanfonia H-100027 (Spain)

1. La Mitad Del Mundo
2. Dama Do Casino
3. Arrastao
4. Gema
5. Estambul
6. Isto Aqui O Que É
7. Brisa Leve
8. Duas Contas
9. Dora
10. Via Papua
11. Samba Em Prelúdio
 



 2000年代に入りました。『PÉROLAS』、ブラジルで発売されたベスト物コンピレーションです。ただ、レーベルが Som Livre ですので RCA 録音は入っていません。 Som Livre から発売のマリア・クレウザ盤は実質二作ですので、ベスト物とは云い難いアルバムでは有ります。ただメドレー曲 "Eu Nao Existo Sem Você / Eu Sei Que Vou Te Amar / Se Todos Fossem Iguais A Você" と "Contigo En La Distancia / Besame Mucho / Amor" は初出曲でした。6曲目の "Eu Nao Existo Sem Você 他メドレー" はトム・ジョビンとヴィニシウス・ヂ・モライス,コンビの曲、ラストのメドレーの中にメキシコの超有名曲 "Bésame Mucho ベサメ・ムーチョ" 、コンスエロ・ベラスケス (Consuelo Velázquez) 作が入っているのには驚きました。昭和の人間なら一番最初に覚えたスペイン語かも知れませんね。

 『SUPER 10』、本格ソロ・デビュー前ヴィニシウス/トッキーニョらとアルゼンチンで Trova レーベルに吹き込んだ楽曲のベスト再編集盤。 Inter CD は安価盤専用レーベルらしきと思われます、曲数は少ないし、カバーは一枚のみで裏は他の「Super 10 シリーズ」の宣伝のみです。ただ選曲自体はわたし好みで通して聴くには良かったです。

 『CANTA VINICIUS DE MORAES (VOCÊ E EU)』、これは漸くの`00年代最初の新録音という事の様です。最初に買ったのは日本盤の方で、カバーデザイン違い、タイトル違い、曲順違いの為、気付かずにブラジル盤をも買ってしまいました。日本盤のカバー写真は`80年代の頃の写真仕様でしょう(?)、売るためとはいえどうなのでしょう、まるでベスト盤の様な感じです。詩人ヴィニシウス・ヂ・モライスが作詞した曲ばかりを改めて歌った曲集です。ヴィニシウスの死後に一度同様の『POÉTICO』を作っていますが、曲がダブらないように選曲されています(まぁ有名曲は以前のアルバムの方に多いですが)。本国盤の方は詩人の歌らしくすべての歌の詞が掲載されてそこに仏語、英語の訳が添えられています。これは助かります。どの曲もしっとりとした恋の歌で、詩に合わせて作曲家陣もしっとりとした曲調に仕上げているのが判ります。ここで気に入ったのは "Amor Em Paz" (曲はトム・ジョビン) でしょうか。本国盤ではラストに、邦盤ではトップに入っています。日本盤ボーナスはトム・ジョビンとの共作曲ですが、同時期に録音された物なのかは不記載で判りません。





 
PÉROLAS SUPER 10 CANTA VINICIUS DE MORAES (Iris)
CANTA VINICIUS DE MORAES (Ward)
PÉROLAS
2000
CD Som Livre 6025-2 (Brazil)

1. Doa A Quem Doer
2. Faz Parte Do Meu Show
3. Doce Safadeza
4. Simples Carinho / Por Causa De Você / Tortura De Amor
5. Da Cor Do Pecado
6. Eu Nao Existo Sem Você / Eu Sei Que Vou Te Amar / Se Todos Fossem Iguais A Você 
7. Chuvas De Verao
8. Fim De Caso / Castigo
9. Folha Morta
10. A Noite Do Meu Bem / Todo O Sentimento
11. Como Uma Onda (Zen Surfismo) / Um Certo Alguem
12. Vinganca / Você Abusou
13. Casinha Branca
14. Marina / Nem Eu
15. Rio Antigo (Como Nos Velhos Tempos)
16. Contigo En La Distancia / Besame Mucho / Amor

SUPER 10
2002
CD Inter CD 7895509130012 ( Brazil)

1. Estrada Do Sol
2. Mas Que Nada
3. Chega De Saudade
4. Por Causa De Você
5. Saudade Da Bahia
6. Corcovado
7. Marina
8. Dindi
9. Maroa Vai Com As Outras
10. O Cantador

CANTA VINICIUS DE MORAES
2005
CD Iris Music 3 001 887 (Brazil)

1. Você E Eu
2. Insensatez
3. A Felicidade
4. Coisa Mais Linda
5. Sabe Vocé
6. Luciana
7. Marcha De Quarta / Feira De Cinzas
8. Primavera
9. Sem Você
10. Sem Mais Adeus
11. Amor Em Paz

 
VOCÊ E EU
CD Ward TKCW 32070 (Japan) 2005

1. Amor Em Paz
2. Coisa Mais Linda
3. A Felicidade
4. Insensatez
5. Marcha Da Quarta-Feira De Cinzas
6. Sabe Você
7. Sem Mais Adeus
8. Primavera
9. Sem Você
10. Luciana
11. Você E Eu
  japanese bonus 
12. Outra Vez





 『MAXXIMUM』、21世紀に入り、音楽産業に変化が現れ中小のレーベルがドンドン大手に吸収されていく様になりました。マリアが黄金期に録音していたブラジルRCAも親会社は米RCA (the Radio Corporation of America の略) でレコード産業創成期は大レーベルのひとつだったのが2004年にSonyグループ傘下に入ってしまいました。そしてようやく本国でRCA録音音源のベスト物コンピレーション・アルバムが発売されました。1987年に日本で出たRCA時代のベスト物と似ています。

 『AO VIVO』、録音年月の記載はないですが、新録新作のボサノバ集です。ナレーションなども聞こえますのでライヴ形式だと思えます。この時期既に60代に成っていたのですが、他に記されていた記事によると時々小さなクラブの様な所で歌っていたとの事です。CDアルバムは普通のジュエルケース入りです。ただ、外に厚紙の箱型ケースがありそこに入っています。ジュエルケース中のカバーデザインには首が隠れる程にお太りに成られている当時の顔写真が使われています。このデザインが普通で昔の写真を使うデザインは [騙し] でしょう。
 内容は往年のブラジル史に残る様な名曲続きで、最高に嬉しく楽しいアルバムです。ボサノバ系、サンバ系、MPB系、どれも熟練の歌唱力でジャズ・ヴォーカルとしても楽しめます。20代の頃から数度、録音した事のある "A Felicidade 悲しみよさようなら" など今回のが一番心に染みます。"Tarde Em Itapoã イタポアンの午後" も`82年『POÉTICO』内よりも聴き応えあります。前半部は昔のしっとりした歌声ではなく余裕のあるゆったりとした歌唱で、これはこれでまた味があります。反面後半の"Garota De Ipanema イパネマの娘"、"Rosa Morena ホーザ・モレーナ" などは`70年代、`80年代の録音の方が好きです。

 『É MELHOR SER ALEGRE QUE SER TRISTE (Maria Creuza Interpreta Baden Powell)』、最初「É melhor ser alegre que ser triste」と6曲目ヴィニシウス・ヂ・モライスの "Samba da Benção 祝福のサンバ" の冒頭部分の歌詞をタイトルに付けて2007年11月に Albatroz から出た物を (わたしの購入盤)、『Interpreta Baden Powell』(Albatros盤ではサブタイト)とタイトルを変えて`08年6月に Iris から再発された模様です。まぁ全11曲中ヴィニシウスの作詞は8曲。バーデン・パウエルの作曲は全曲で、一応2000年に亡くなったバーデン・パウエルへの追悼の意を込めたアルバムなので、後者のタイトルの方がピッタリなのかも知れません。バーデン・パウエルという名はセルジオ・メンデスやジョルジュ・ベンと並び日本で早くから知れ渡ったブラジルのミュージシャンでしょう。1970年には来日してライヴ盤も発売されていました。
 アルバムは、ジャズ界でも知れ渡っている "Berimbau ビリンバウ" から始まりますが、私的にはボサノバ風味にバックにホーンが入りジャズっぽい2曲目 "Tem Dò" の方が好みです。そして "Lapinha ラピーニャ" も良いです。
 "Samba da Benção 祝福のサンバ" のタイトルから想像してしまうあのダンス用サンバ・リズムは全くなく、シンプルなメロディーで少し可愛い部分もある曲です、冒頭部分の歌詞は「悲しいより楽しい方がいい、喜びは最高のもの、 それは心の中の光のようだ」といった意味の様で、マリア・クレウザは最初この冒頭部分が気に入りタイトルにしたのでしょう。バーデン・パウエルよりも関係の深いヴィニシウス・ヂ・モライスの詩への敬愛でしょうか。
 ギター・インストとして有名な "Samba Triste 悲しみのサンバ"、こちらもホーンが入りジャズっぽいアレンジが良いです。"Deixa デイシャ(離別)" も、ジャズっぽい間奏部分が好きです。ヴォーカル主体曲としては "Consolacao コンソラサォン" がボサノバ調で最高に良い感じです。`70年代の歌唱 (独特のしっとりとした甘さ)はかなり変わっていますが、それも年齢を重ねての事。こちらはこちらで楽しめます。





 
MAXXIMUM AO VIVO (Bons Momentos Da Bossa Nova) É MELHOR SER ALEGRE QUE SER TRISTE (INTERPRETA BARDEN POWELL)
MAXXIMUM
2005
CD Sony BMG Music 2 515777 (Brazil)

1. Onde Anda Você
2. Dom De Iludir
3. Nossos Momentos
4. Com Açúcar, Com Afeto
5. De Conversa Em Conversa
6. Chega Pra Lá
7. Tortura De Amor
8. Trocando Em Miúdos
9. Otália Da Bahia
10. Tudo Se Transformou
11. Quase
12. Começaria Tudo Outra Vez
13. Lua De Sáo Jorge
14. Frenesi
15. Tarde Em Itapoã
16. Escravo Da Alegria
17. Exaltação A Tiradentes

 
AO VIVO (Bons Momentos Da Bossa Nova)
2006
CD Albatroz 011.008 (Brazil)

1. A Felicidade
2. Tarde Em Itapoã
3. Eu Sei Que Vou Te Amar
4. Berimbau
5. Manhã De Carnaval
6. Corcovado
7. Chega De Saudade
8. Garota De Ipanema
9. Simples Carinho
10. Rosa Morena
11. Você Abusou
12. Tristeza

AO VIVOinner cover
É MELHOR SER ALEGRE QUE SER TRISTE
(Maria Creuza Interpreta Baden Powell)
2007
CD Albatros 011.055 (Brazil)

1. Berimbau
2. Tem Dò
3. Lapinha
4. Apelo
5. Pra Que Chorar
6. Samba Da Benção
7. Samba Triste
8. Consolacao
9. Canto De Ossanha
10. Deixa
11. Feitinha Pro Poeta
 





下記はシングル盤(EP盤)です




 
 LP『EU DISSE ADEUS 邦題;リオの黒バラ』項で記した通り、ブラジルと日本での発売年ズレから入手しなかった邦盤LPにマリア・クレウザが初来日「世界歌謡祭」で歌った曲が、曲の差し替えで入れられて発売されたたために、入手したシングル盤が"QUE DIACHO DE DOR 恋の痛手"でした。
 `70年代は`60年代から続きまだまだ、フランスやイタリアの曲が日本でもかなり発売されていました。それもフランスの「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」やイタリアでの「サンレモ音楽祭 (イタリア音楽祭)」の人気が高かったからでしょう。それを模倣した様な感じで日本でも`70年に「世界歌謡祭」、`72年に「東京音楽祭」の二種の各国招待歌謡祭が行われていました。
 マリア・クレウザはこのうち「世界歌謡祭」の方に`74年 (第五回) `79年 (第十回) の二度来日参加していました。この "QUE DIACHO DE DOR" はマリア・クレウザとアントニオ・カルロス&ジョカフィの共同名義で入賞曲に成っています。(B面曲はマリア・クレウザが参加していないアントニオ・カルロス&ジョカフィ歌唱曲です)
 グランプリで最優秀歌唱賞はエレン・ニコライセン (Ellen Nikolaysen) が歌った"You Made Me Feel I Could Fly 夢みる心地"。第十回大会の参加曲が "LUANDA SILÊ 我が心のルアンダ" で入賞。この曲の邦盤シングルはB面扱いでA面は "OUTRA VEZ BAHIA もう一度バイーアへ" 曲自体の良さから言えばまぁB面扱いでも仕方なしでした。グランプリは "Holding Out for a Hero" で有名なボニー・タイラーの『Sitting On The Edge Of The Ocean 哀しみのオーシャン" と日本のクリスタル・キング "大都会" W受賞でした。ボニー・タイラーのグランプリ曲は葛城ユキのカバーの方が売れて、ボニー盤はそこまで売れなかった様です。

 ちなみに個人的な感想としては「世界歌謡祭」の方は通好みな印象で「東京歌謡祭」の方が一般的でポピゥラリティーな感じです、「東京歌謡祭」のグランプリ曲が全米でヒットした曲はかなりあります。マリリン・マックゥとビリー・デイヴィス・ジュニアの夫婦デュオが歌った『You Don't Have to Be a Star 星空のふたり』 (この曲は超大好きです) 、はBB誌POPチャート全米1位、スリー・ディグリーズが歌った『When Will I See You Again 天使のささやき』はBB誌同ちゃーと2位になるヒットと成っています。世界的に有名な音楽祭に成っていました。
 また審査員にゲストなど (リンダ・ロンシュタットやシルヴィ・ヴァルタンも) に大物を迎えて話題づくりも上手かったと思います。
QUE DIACHO DE DOR 恋の痛手 OUTRA VEZ BAHIA もう一度バイーアへ
QUE DIACHO DE DOR / FRAQUEZA

EP RCA SS-2429 (Japan) 1975


 
OUTRA VEZ BAHIA / LUANDA SILÊ

EP RCA SS-3245 (Japan) 1979