《 笠井 紀美子 》

 笠井紀美子さんは、現在音楽界から身を引いてカリフォルニア州でジュエリー・デザイナーとして過ごされています。ただ、生まれは日本で、勿論日本人のシンガーです。
 わたしが「生徒と呼ばれる世代」時からのめり込んで聴いていたのは洋楽です。邦楽系も聴いては居ました、好きな曲も沢山有ります。 ただ、「のめり込む」という表現は洋楽系にしかありませんでした。
 シンガーやミュージシャンの事を記して来たのは外国の人たちばかりですが、彼女・ケメコさんのレパートリーは九割以上が英語歌詞でジャズやフュージョン系ですので、日本のシンガーですが、ジャズを良く聴いていた時期に聴き込んで居て、コンサートにも二度行った程です。初期の彼女は常にデニムジーンズのイメージでボーイッシュ、中性的な感覚も魅力のひとつでした。日本のシンガーですが是非とも想い出と共に記録を残しておこうと…。開始です。

〜70年代

 ケメコさんは1945年12月15日、京都市内で生誕。同志社高等学校を1年ほどで中退して歌手を目指し東京へ移られています。16歳 (本人談) で移住後、しばらくはサックス奏者の海老原 啓一郎&ロブスターズで修業しながら歌っていたとのこと。その後、世良譲氏の下で修業し(何故かレコードデビューは歌謡曲の「薔薇のいざない(なかにし礼, 村井邦彦作)」でしたが)、20代前半には既に国内・国産のジャズ・シンガーとしてトップに躍り出て大成功をおさめる迄に成っています。
 ジャズを歌うきっかけは 13歳頃に聴いたChris Connor の曲 ("All About Ronnie") だったとの事ですが、好んで聴いたのは Sarah Vaughan や Carmen McRae だったと云うことです・ただ、初期のシンガーとしての位置は Bev Kelly に似たホーン・ライクな唱法シンガーとの評価だったと記憶しています。

 それはソロとしてのデビュー・アルバム『Just Friends』内の "Just in Time" 等を聴くと確かに的を得た評だと思えます。
コンボ内に溶け込んで発声される「声」を一種の管楽器として聴いても成り立つような感じですね、バックは大野雄二トリオでヤマハ・ホールでのライヴ録音盤です。(ベース・水橋孝、ドラムス・ 小原哲次郎)
 "Sunny" 、"By the Time I Get to Phoenix" を除くとジャズ・スタンダードとして多くのシンガーに歌われている曲が殆どですが、その2曲でもポピュラー畑とは違うジャズ化した歌唱です。
 トップに選ばれた "There Will Never Be Another You" (Mack Gordon - Harry Warren 作) はインスト・オンリーもあり様々なスタイルで演奏・歌唱が行われていますがケメコさんのはデビュー盤収録らしくハツラツとしたアップテンポでスィングしたアレンジで気にっています。また、ケメコさんの好きなカーメン・マクレエでが歌った曲の収録も多いですが、クリス・コナーも歌った "Get Out of Town" (Cole Porter 作)  も若々しくて良いです。わたしが最初に聴いたのは Anita O'Day でした。個人的には好きな曲が多く`70年代初期の彼女のアルバムの中でも特に好きなアルバムです。

セカンド『ONE FOR LADY』は丁度来日していた Mal Waldron との共演で彼女の名前が更に広まった好盤。マルが伴奏を務めていた Billie Holiday の楽曲ばかりを歌った物で確実に話題に成りそうな編集物です。その中で "Some Other Day" のみがマルがケメコさんの為に書いた曲。二作目にして比類のジャズ・シンガー、ビリーの歌集に挑んだのは流石のケメコさん。"Left Alone" はJackie McLean がビリーの代わりを務めて知れ渡り日本では超有名な人気曲。曲の良さも有り、気怠さを漂わした唱法がラストの締め括りで決めています。このラスと曲とトップの "Don't Explain" が良かったです。ベースは鈴木良雄、ドラムスが村上寛。数年後にはドラマーの村上寛氏とケメコさんは結婚していますが、後に離婚されています。ジャズ・ファンの間では「Lady Day」「Lady」とはビリー・ホリディの代名詞です。
ジャズ・シンガーの殆どの人がビリーの愛唱歌のうちいくつかを録音しています。個人的には ビリーの場合 Decca 時代の歌声が好きです。

 三作目『YELLOW CARCASS IN THE BLUE』は Three Blind Mice という出来立ての国内ジャズ専門レーベルから発売されました。(他にも国内ミュージシャンを紹介するJazz専門レーベルに East Wind (伊藤八十八氏の設立) も有りましたが、 Three Blind Mice の方は、設立者のひとりにケメコさんも所属する「あいミュージック」の鯉沼利成氏もおられました) 。 Three Blind Mice では日野皓正さんや中本マリさんの盤を入手したことありますが、いつの間にか消えていてどうやら倒産してしまったというレーベルです。ケメコさんと峰厚介クァルテットの録音は他のレーベル用に録音しながらこちらから発売と云うことになった様です。
 6曲中4曲がメンバー作で彼女のオリジナル曲も含まれていますが歌詞はすべて英語です。峰厚介のサキソフォン以下、ピアノが菊池雅洋、ベースが鈴木良雄、ドラムスが村上寛。
 レコード盤両面のトップ曲がスタンダード曲、歌唱部分では Howard Dietz、Arthur Schwartz 作の "Alone Together" が好きですが他の曲では峰氏のソプラノ・サックスがイイ感じで響いています。


Just Friends ONE FOR LADY YELLOW CARCASS IN THE BLUE

JUST FRIENDS
 1970 London - SKK 3006

A
1. There Will Never Be Another You
2. Sunny
3. Exactly Like You
4. Just In Time
5. Wild Is The Wind
B
1. By The Time I Get To Phoenix
2. Bewiched
3. Get Out Of Town
4. Good Life
5. Just Friends

Live at the YAMAHA HALL Sep. 16 `70


ONE FOR LADY
    (and Mal Waldron)

1971 Victor World Group - SMJX-10119

A
1. Don't Explain
2. My Man
3. Some Other Day
4. Willow Weep For Me
B
1. Yesterdays
2. Lover Man
3. You're My Thrill
4. Left Alone
YELLOW CARCASS IN THE BLUE
  (with MIne Kosuke Quartet)
1971 Three Blind Mice - T.B.M-8

A
1. Alone Together
2. Blues In C Minor
3. River Dry
B
1. Round Midnight
2. Yellow Carcass In The Blue
3. Be Still My Soul
 『UMBRELLA』は全曲が日本語でジャズからは完全に離れた異質なアルバムです。スパイダースのかまやつ ひろし氏がプロデュース、 楽曲も数曲提供。バックは大野 克夫、つのだ ひろ、細野 晴臣(宇野もんど名義)、鈴木 茂(ほしいも小僧名義)と有名どころが揃い、作曲も成田 賢、大野 雄二と日本のロック界からの人選で固められて「ロックへ挑戦」意識を狙ったアルバムですが、ケメコさんの意思がどれだけ有ったのかは聞きたいところです。`60年代後半にアメリカで広がったサイケデリック・ロック調からフォーク調などが混ざり、完全な企画ものだと思われます。専属契約のレーベルは持たなかった時代だった様で、東芝音工から Liberty レーベル経由で発売されてました(東芝音工が東芝EMIに社名が変わった後、フォーク系レーベル Express レーベル経由に変更されていました)。聴き返すことが殆ど無かった盤です。

 『SATIN DOLL with Gil Evans Orchestra』。 ようやく専属のレーベルとしての契約は CBS SONY に成ったのですが最初が Miles Davis 等との共演で有名なジャズ・ピアニスト、アレンジャー Gil Evans 。最初のマル・ウォルドロンもそうですが、その後の共演者をみても海外のビッグ・ネーム・ミュージシャンとの共演がかなりあります。
 どれも鯉沼利成氏の呼びかけのおかげでしょうが、ギル・エヴァンス60歳、認めて貰えないとレコード製作に付き合っては貰えないでしょう。
 ジャズの世界に戻って来たときは嬉しかったです。タイトル・ナンバーは Duke Ellington 作。"I'm Walkin'" は米BB誌R&Bチャートで1位になった Fats Domino の曲、ギル・エヴァンスのアレンジでしょうが原曲からガラッと変わっています。"When Sunny Gets Blue" は Jack Segal - Marvin Fisher コンビが書いた曲で彼女の好きなカーメン・マックレエも歌った曲ですが、この曲の歌い方を聴くと、ホントにホーン・ライク唱法の極みだと感じてしまいます。
"There Will Never Be Another You" 二度目の録音曲ですが、デビュー盤と比べたらテンポが思い切りスローで、わたしの持っている中では Julie London 風のバラード・アレンジでした。ミュージシャンは日本人の方が若干多い多人数、ホーン奏者が峰厚介さんなど5人もいます。

 ギル・エヴァンスの次は Oliver Nelson との共演です。オリバー・ネルソンは Impulse! レーベルでヒット作を幾つも出していた大物。この2年後に心臓発作で急逝しているので貴重な共演です。他に国内一のビッグ・バンド、原信夫とシャープス&フラッツがバックですが、二者ともこれまた鯉沼利成氏の力(鯉沼氏の業界入りはシャープス&フラッツのバンド・ボーイが始まりだったとか)でしょう。『In Person featuring Oliver Nelson』
 割と日本で有名な曲が選曲されているアルバムです。 "You'd Be So Nice To Come Home To" などはその代表曲。
意外なのはポップ・ソング "Go Away Little Boy (原歌詞は Steve Lawrence の歌唱用に Little Girl )" で、Gerry Goffin - Carole King の作品、ジャズ・アレンジで聴かせます。この中で一番好きな曲は "Guess Who I Saw Today 邦題 : 今日あった人" ミュージカル・ナンバーで「New Faces of 1952」内で歌われた曲とのことです。ケメコさんは勿論カーメン・マックレーで知られた曲でしょう。
 [夜遅くに帰宅した旦那に、自分が偶然立ち寄ったカフェ・バーで夫の浮気現場を目撃、何知らぬ顔で「ネェ、今日わたし誰を見かけたと思う?」と問いかける] 歌詞です。Murray Grand - Elisse Boyd 作の哀しい歌なのですが、何故か微妙な面白さでジャズ・ヴォーカル・ファンに人気なナンバーです。


UMBRELLA SATIN DOLL In Person
UMBRELLA
1972 Liberty LTP-9050

A
1. Over The Waves With Love
  (ベッドの舟で愛の海へ)
2. Blues For George
  (ジョージのブルース)
3. Closed In  (とじこめて)
4. Drifting Clouds  (窓をよこぎる雲)
5. Barren  (渇き)
6. End Of Love  (エンド・オブ・ラブ)
B
1. It's All In One
  (すべては一部のすべて)
2. Winter, Spring, Summer & Fall
  (四つの季節)
3. It's Only An Hour
  (ちょうど一時間)
4. You Talk Too Much
  (ユー・トーク・トゥ・マッチ)
SATIN DOLL
(with Gil Evans Orchestra)
1972 CBS SONY SOPL 108-XJ

A
1. Day By Day
2. Poor Butterfly
3. Bye Bye Blackbird
4. I Fall In Love Too Easily
5. Satin Doll
B
1. I'm Walkin'
2. When Sunny Gets Blue
3. There'll Never Be Another You
4. Good-Bye
IN PERSON
(featuring Oliver Nelson)
1973 CBS/SONY SOPM 73

A
1. Goody Goody (Theme)
2. You'd Be So Nice To Come Home To
3. It Never Entered My Mind
4. Close Your Eyes
5. How Insensitive
6. Go Away Little Boy
7. Shiny Stockings
B
1. I'm Walkin'
2. Some Other Day
3. It's Alright With Me
4. Goody Goody (Theme)
5. Guess Who I Saw Today
6. 3-2-1-0 (Band's Theme)

Live at Tokyo Yubinchokin Hall,
Sept. 24 1973

『WHAT'S NEW』、海外大物との共演が続いて出されていましたが、本作は馴染の深い国内のミュージシャンをバックにスタンダードばかりの選曲で発表。(菊池雅洋、鈴木義雄、村上寛のトリオ)ピアノトリオのバックなのでスタジオ録音ながら小さなジャズ・クラブの雰囲気で味わえます。オリバー・ネルソンとの共演盤でも歌った "Guess Who I Saw Today 邦題 : 今日あった人" を再度録音しています。"They Can't Take That Away From Me 邦題 : 私からは奪えない" ( Ira & George Gershwin作) も有名なスタンダードでミュージカル・ソングで好きな曲です。(只この曲のわたしのベストは Peggy Lee ヴァージョンです。)
 タイトル・ナンバー (Johnny Burke - Bob Haggart作) も有名曲で勿論ペギー・リーも録音していますが、Helen Merrill のあの大人気盤の中にも収録されていますから、そちらで知った人の方が多いでしょう、元のタイトルには?マークが付いています。
 カバー・デザインの写真でケメコさんはタバコを手に挟んでいます。`60年代〜`80年代前半位までのジャズアルバムのカバーにタバコを加えたり吸っている(男女問わず)写真がホントよく使用されていました。マイルスやセシル・テイラー、コルトレーンなどのカバー・ジャケットは粋でシャレた感じでした。そうジャズの流れている場所は煙がモクモク上がっていました。

 『THANKS DEAR』、彼女がアメリカに渡って録音した最初の作品でロスで1974年8月28日・29日とデータ記載されています。バックはJoe Sample (p)、Ray Brown (b)、Shelly Manne (ds) の豪華トリオ。オリバー・ネルソンが監修者としてクレジットされています。
"Get Out Of Town" はファースト・アルバムに続き2度目の録音、前回よりテンポは少し遅め、個人的には最初の方が好みです。"Makin Whoopee" は Gus Kahn - Walter Donaldson 作の古い古いスタンダード・ソングでジャズ畑だけでなく Harry Nilsson や Dr. John 等もレパートリーにしている曲。

 『KIMIKO IS HERE』新宿「ピットイン」バックはCedar Walton Trio (Cedar Walton-piano、Sam Jonens-bass、Billy Higgins-drums)。ケメコさんとシダー・ウォルトンとの共演は別会場でわたしも体験しています。選曲は今までに録音してきたタイプと違うタイプが選ばれいます(ピアノ主体のバックと云うのは私的には好みです)。全体曲の中中間あたりの曲が良いですね。

WHAT'S NEW THANKS DEAR KIMIKO IS HERE
WHAT'S NEW
1973 CBS/SONY - SOPL 183

A
1. But Not For Me
2. Guess Who I Saw Today
3. The Old Feeling
4. They Can't Take That Away From Me
5. Body And Soul
6. Close Your Eyes
B
1. But Beautiful
2. I Thought About You
3. Glad To Be Unhappy
4. What's New
5. The End Of A Love Affair
THANKS DEAR
1974 CBS SONY SOPM-166

A
1. Get Out Of Town
2. I Want To Talk About You
3. Too Close For Comfort
4. Makin Whoopee
5. Somebody Loves Me
6. Mistreated Blues
B
1. Moody Mood For Love
2. Sometimes I'm Happy
3. I Didnt Know What Time It Was
4. Gone With The Wind
5. For Once In My Life
KIMIKO IS HERE
(with Cedar Walton Trio)   
1975 CBS SONY SOPN-114    

A
1. Dat Dere
2. I Am The Girl
3. No Tears(In The End)
4. Meaning Of The Blues
5. It Could Happen To You
B
1. Sad Song
2. I Sidn`t Know What Time It Was
3. Moondance
4. `Round Midnight
5. Jazz Ain`t Nothin` But Soul

Live at ShinjukuPit In Dec. 22 1974

 『THIS IS MY LOVE』、1975年ニューヨークでの録音、`70年代中期の彼女作品中、最も好きなアルバムです。参加ミュージシャンは、Lee Konitz(a.sax)、Stan Getz, Al Cohn (t.sax)、Cornell Dupree, Jerry Friedman, Joe Beck(guit)、Bobby Scott(key.)、Bob Crankshaw(bass)、Allan Schwartzberg, Billy Lavangna(drums)とここでも豪華な顔ぶれでホント毎回驚かされていました、ニューヨーク録音でプロデュースは Teo Macero (Miles Davis の『Bitches Brew』で有名)。
モノクロのちょっと何故だかお疲れ気味の表情も良いですね。Topはソウル・シンガー Bill Withers のヒット曲でBB誌のソウル・チャート、ポップ・チャート共に`72年に2位迄上がった曲です。
 スタンダードからボサノヴァ系まで歌っていますが、異色選曲は "Happy Together" 1967年全米全英1位に成った the Turtles のオールド・ロック・ナンバー、好きな曲ですが、実に良いジャズアレンジで聴きものです。
 "Love For Sale" はお馴染みコール・ポーター作ですが、『WHAT'S NEW』のところで書いたタバコを加えた女性のデザインで有名なセシル・テイラーのアルバム・タイトルが『LOVE FOR SALE』でした。

 『WE CAN FALL IN LOVE』前作に続きプロデュースは Teo Macero 、今回はシカゴで録音されたアルバムの様です、バック・ミュージシャンのクレジットは記載されていません。
トップはケメコさんのオリジナル曲、ディスコ調の出来に成っています。ジャンル的に当時の音楽界背景とマッチして好セールスを上げたアルバムです。
 全編のアレンジはファンク系の Richard Evans が担当ですが彼のオリジナルが "Being In Love"、"Along The Nile" の2曲。異質はLeon Russell作で後に George Benson がヒットさせた "This Masquerade" 、ケメコさんのは G. Benson がヒットさす前なのでオリジナル・レオン盤をアレンジしたと思われます。
この曲ジョージ・ベンソンのは甘ったる過ぎて気に入らなかったのですが、こちらはノリもあり結構良い感じです。またカーペンターズのヴァージョンは素直でこちらも良さを感じます。

 『UMBRELLA』以来のオール日本語歌詞によるアルバム『TOKYO SPECIAL』。中途半端さを感じた『UMBRELLA』よりは私的にはこちらの方がかなり好感持てます。詞は全曲安井かずみさん、曲は鈴木 勲、鈴木 宏昌、森 士郎、横倉 裕。そして別ジャンルから筒美 京平、山下 達郎、矢野 顕子各氏。バックは鈴木 宏昌率いるコルゲン・バンド。曲により日野 皓正(tp)、鈴木 勲(b) 参加と日本語アルバムにしては注目度も有りこのアルバムも売れていたと記憶しています。昔はフュージョン的だと評されていましたが今聴き返すとかなりポップな部分も感じました。
 一番ジャズよりなのはさすがのジャズマン、鈴木 勲さんの "やりかけの人生" でしょうか。

THIS IS MY LOVE WE CAN FALL IN LOVE TOKYO SPECIAL
THIS IS MY LOVE
1975   CBS SONY SOPN-165

A
1. Use Me
2. Come Rain Or Come Shine
3. Happy Together
4. The Good Life
B
1. Love For Sale
2. Autumn Leaves
3. The Lamp Is Low
4. And Roses And Roses
5. I Wish I Could Walk Away
6. Little Things

WE CAN FALL IN LOVE
1976 CBS SONY 25AP-260

A
1. We Can Fall In Love
2. In Common
3. Love Don't Love Nobody
4. This Masquerade
B
1. God Bless The Child
2. Being In Love
3. Along The Nile
4. Today, Tomorrow And More Than Yesterday
TOKYO SPECIAL
1977 CBS SONY 25AP-730

A
1. Vibration  (Love Celebration)
2. やりかけの人生
3. 夏の初めのイメージ
4. Very Special Moment
5. 人はそれぞれ
  (Just Another Love Song)
B
1. Tokyo Spacial
  (Manhattan Special)
2. 木もれ陽  (Sequoia Forest)
3. Take Me
4. 待ってて
  (Laid Back Mad Or Mellow)

『ROUND AND ROUND』1978年、サンフランシスコの The Automatt Studio での録音。ケメコさんはこの年から日本を離れてサンフランシスコに移住されました。英語歌詞ソングを主に歌う歌い手として、英語の理解力と会話力を高めたいというのが移住の決意の中心だったということです。
 後は日本で公演される際は「来日公演・帰国公演」と表示されています。バックは現地のフュージョン系ミュージシャンが多数参加していますが、"Stardust"、"Everything Must Change" にシダー・ウォルトン、"Chameleon" にハービー・ハンコックが参加したのが目玉でした。"Nothin' But You"、"The Rest Of My Life" がケメコさんのオリジナル。移住した年に「The Rest Of My Life」は意味深です。全体的にこのアルバムにはあまり思い入れは有りません。アートワークに Nancy Donald という女性名のクレジットが有りますが、表裏共々のこの写真はガッカリです。

『BUTTERFLY』共演が凄く話題に成ったは Herbie Hancock 全面参加のアルバム。収録はハービーが来日していた時だったので意外ながら日本の CBS-Sonyのスタジオで行われています。この時期ハービーは Freddie Hubbard、 Wayne Shorter 等と「V.S.O.P.」というフュージョン・グループでフユージョン界をけん引していた時期でした。「Swing Journal誌」と共に「ADLIB誌」も 最初はほぼ毎月読んでいましたが、(「ADLIB」の方はフユージョン・ブームが過ぎた頃から混ぜこぜジャンル扱いに成って終い購読を辞めています) どちらも既に休刊状態(決して廃刊と表示されていないところが憎いです、「Jazz Life」は時々買いましたが、どうやら復刊しているみたいです)。「Swing Journal」などは復刊される可能性無きにしも非ずでしょうね。
 このアルバムでのケメコさんの歌唱はジャズ・フィーリング復活をかなり感じられます。ディスコ・タイプやファンキー・タイプ等結構いろいろなジャンルを歌われていましたが、ハービーとの共演でジャズ・シンガーとしての本領を示された感じです。8曲中6曲がハービーの曲、"As" は 超有名な Stevie Wonder の曲。
 
ROUND AND ROUND BUTTERFLY with Herbie Hancock
ROUND AND ROUND
1978 CBS SONY 25AP-1050

A
1. And It All Goes Round And Round
2. Don't Forget You Are
3. Nothin' But You
4. Stardust
B
1. Chameleon
2. The Rest Of My Life
3. Chain Reaction
4. Everything Must Change
BUTTERFLY
(with Herbie Hancock)
1979 CBS SONY 25AP-1350

A
1. I Thought It Was You
2. Tell Me A Bedtime Story
3. Head In The Clouds
4. Maiden Voyage
B
1. Harvest Time
2. Sunlight
3. Butterfly
4. As


80年代以降

 `80年代に入ってからは [ジャズ・シンガー][フュージョン・シンガー] などと呼べるシンガーではなくなっていきました。
ケメコさんが望んだことですので受け入れるしかないのですが、寂しさを感じたファンはかなり居たと思います。
 `80年代最初のアルバムはロス録音『KIMIKO』,プロデュースは後の1990年に再婚相手となる Richard Rudolph 。彼は5オクターブの持ち主と云われた Minnie Riperton (大ヒット曲 "Loving You") の旦那さんで 1979年にミニーが乳がんの為に世を去り死別されていました。アルバム全体から受ける雰囲気はブラック・コンテンポラリーというジャンルに分けられていたタイプに成るのでしょう。ただ黒っぽいフィーリングが感じられて印象に残ったのはトップの "The Right Place" くらいで、他は無機質的な作りで上流社会の人たち向けな音楽だなぁと感じました。その "The Right Place" も最初聴いた時は Amii Stewert の "Right Place, Wronf Time" にタイトルも曲調も似ているので同曲だと一瞬思ってしまいました。

 1984年発表のの『LOVE TALK』も Richard Rudolph を始め前作と似たスタッフで延長線上のアルバム。アルバム裏写真は貴婦人的な姿で数年後に宝飾デザイナーに成るのを匂わせています。Tシャツ・ジーンズ姿のジャケっと写真から10年が経ちました。
 前作よりは少し [歌] パートの比重が増えて気がします。"The Things That We Do When We're Lonely 邦題:さみしい時には"、"Make Up, Breake Up" などは囁きタイプですが、まぁ耳を傾けられます。後者の作者に映画『Flashdance』内でも曲を披露していた ("Maniac") Michael Sembello の名がみえます。タイトル曲は明らかに80年代中頃に流行ったクラブ系タイプの曲。

 『NEW PASTEL』、これはケメコさんにとって久しぶりの日本での録音アルバムに成りました。ホーン奏者は、ほゞほゞ日本のミュージシャンですがギター、ベース、キーボード、ドラムス等のリズム担当プレイヤーはロスから呼んでいます。プロデュースは伊藤八十八氏 (East Wind レーベルの設立者) の下、CBS SONY の国内スタッフで明らかに日本在住時のケメコさんのファン心理を理解されている方だと感じました。
トップの "Give Me Your Heart Tonight" はキレとノリが気持ちよい曲。作者の中に Franne Golde (女性ロッカー) の名が有ります。("Louisiana Sunday Afternoon" も同コンビ曲)
 "Alfie" は Burt Bacharach & Hal David の有名コンビの楽曲で映画『Alfie』のタイトル曲、ただ、この映画の音楽担当は Sonny Rollins で演奏共々ジャズ・ファンには先にそちらで有名ですが、サントラ盤にはソニー・ロリンズ以外の歌曲は入らず、Cilla Black や Cher のシングル盤でヒットしました。またビートルズ・ファンにはポールの最初のガール・フレンド、Jane Asher の出演でも有名になった映画でした [次から次へと女性遍歴を続ける男=アルフィーみたい] と永らく比喩された有名フィルムでした。ケメコさんの歌唱はポピュラー・ヒット・ヴァージョンに比べたら流石にジャズ・シンガーらしきモノです。"You Take My Breath Away" は日野皓正さんがゲスト参加したファンク系ソング。ファンク系はG.C.S. (Larry Graham) が好きですのでどうしてもベースが弱く感じてしまいますが,
まぁ、よろしいのじゃないかと。"It's Not The First Time" はじっくりと聴かすタイプ、良い曲です。
 "You'll Never Know" はこのアルバム中一番のお気に入り曲。米ファンク・グループ Hi Gloss が出した曲 (意外と心地よい構成) のカヴァーに成るのですが、そんなにヒットもしなかったので、ここで取り上げられたのには驚きです。
 ラストは "I Will Wait For You" フランスのジャズ・ピアニストであり映画監督でもあった Michel Legrand 『シェルブールの雨傘 (`64,オペラ形式の映画)』のテーマ曲、原詩はフランス語ですが英語歌詞でも有名なスタンダードになっています。前二作のモヤモヤ感を払拭する出来のアルバムでした。

KIMIKO LOVE TALK NEW PASTEL
KIMIKO
1982  CBS SONY 28AH-1420

A
1. The Right Place
2. Looking For Love
3. Steppin' Outside Tonight
4. I'm So Much In Love
B
1. I Feel You Glancin'
2. Love Is All We Need
3. I Wish That Love Would Last
4. Over You
LOVE TALK
1984  CBS SONY 28AH-1688

A
1. No Way, Not Me
2. Whisper Love
3. The Things That We Do When We're Lonely
4. Mmm Mmm Good
A
1. Killing Me Softly With His Song
2. Make Up, Breake Up
3. Love Talk
4. Nailed In The Pocket

NEW PASTEL
1984  CBS SONY 28AH-1790

A
1. Give Me Your Heart Tonight
2. Chameleon
3. Alfie
4. You Take My Breath Away
5. It's Not The First Time
B
1. You'll Never Know
2. So In Love
3. Lullaby Of L.A
4. Louisiana Sunday Afternoon
5. I Will Wait For You


 『WATCHING YOU』、完全に新アルバムと言い切りにくい異色アルバムです。新たな録音は "Watching You" , "The Way We Were 邦題:追憶" で他曲は既発表曲の録り直しに成っています。1976年『WE CAN FALL IN LOVE』〜1984年『LOVE TALK』の6作の中の注目曲を再録しています。今回、プロデュースは Larry Williams と記載されていますが、Executive Producer 名に伊藤八十八氏の名前が、サウンド的に安心です。(Larry Williams はビートルズらが手本にしたR&Bシンガーとは別人)前回よりわたしの好みに近くなったと感じたのは "We Can Fall In Love"、"Steppin' Outside Tonight" 、あと "Killing Me Softly〜優しく歌って" も良いのですが、`80年代の歌唱でやたらキーが高く声が細く聞こえる曲が何曲か有ったのが気になっていましたが、この曲もそんな感じです。`70年代のケメコさんはもっとストレートな唱法で(枯れ気味ながら)渋さを持った太い声で歌っていた時がありました。そこに魅力有ったと感じます。
 別件:この頃はまだCDデッキやCDプレイヤーが世界的 (特に日英米独辺り以外各国) に普及していなかった時代でLP盤とCD盤の二種同時発売が多く有りました。

 『MY ONE AND ONLY LOVE』、ニューヨークでの録音ながらプロデュースは伊藤八十八氏と成っています。そして全編全曲がジャズ・スタンダードと非常に嬉しい選曲です。バックもシダー・ウォルトンのピアノ・トリオ。曲により Michael Brecker のサックス、Michael Stern のギターが入ります。タイトルにもなったトップの曲は "My One And Only Love 邦題:この世で愛するただ一人の君" (Robert Mellin, Guy Wood 作),男性歌手用の曲ですが、女性歌手も結構歌っておられます、ケメコさんお気に入りのカーメン・マックレエ、サラ・ヴォーンも。この曲を有名にしたのは Frank Sinatra で Capitol 時代のシナトラは男性ジャズ・シンガーとしてノリノリで大好きです。自身が設立にも係わった Reprise 時代以後はポピユラー歌手化されてしまいましたが。
  "Trav'lin' Light" は Billie Holiday & Paul Whiteman and his orchestra 物とPeggy Lee With Dave Barbour and his Quinte 物を持っていますがどちらも`40年代の録音で古い物。ケメコさんとシダー・ウォルトンの本作はそのようなノスタルジックな雰囲気が上手く出ていて声も可愛らしく聞こえて気に入りました。
 "'S Wonderful" も超有名曲、サラ・ヴォーンも歌っています。わたしが聴きなれたのは Verve の Anita O'Day ヴァージョン。ケメコさんのこれくらいのテンポの曲は安心して聴けます。反面次の "All The Way" の様なスロー・バラードは Capitol 時代のシナトラを聴いていると、やはり線が細く感じます。同系統は "My Romance" カーメン・マクレエの声がしっかり余裕で出ているのを聴いた後では、声楽部を押さえて録音されたここでは線が細く自信無さそうに聞こえます。
 "Stella By Starlight 邦題:星影のステラ" と "It Could Happen To You" はスタンダードながら歌物は持っていなくて、前者は Miles Davis の『1958Miles』、後者もマイルスの『Relaxin'』と Jackie McLean の『Jackie's Pal』とホーン奏者のコンボ演奏です。あとBillie Holiday , Commodore 盤で有名な "Lover Come Back to Me 邦題:恋人よ我に帰れ"。3曲ともミディアム・テンポでスィング・タイプの曲、シダー・ウォルトン共々お手の物でしょう、流石に良い感じです。
 " 'Round Midnight" はマイルスのヒット作品『Round about Midnight』以外に、有名なジャズメンがこぞって演奏している名曲でCootie Williams, Thelonious Monk の曲に歌詞が付けられたのは後の事で作詞者は Bernie Hanighen という人らしいです。ケメコさんは峰厚介カルテットとの共演盤に次いで2回目です。
  今回は、シダー・ウォルトンのピアノとマイケル・ブレッカーのサックスが耳に心地よく響きケメコさんの絞る様な歌い方も似合っていると思います。スロー・ナンバーに関しては囁くような歌唱よりこちらの様な絞り出すタイプの方が合っているのでは?
しかし、この曲演奏物は数多いのに歌唱盤はグンと少ないですね、私の持っている歌物はケメコさん以外ジャズ・シンガーではない Linda Ronstadt 歌唱の物のみでした。
 デビューし立てでなく十年以上歌い続けていてそこで誰もが歌ったスタンダード集を出すのは、比較対象が多く歌手側からしたら勇気要りそうですね。

 肩出し、背中出しの次は太もも出しとなったアルバムでした『PERIGO A NOITE』。3作目の日本語歌唱作品。
プロデュースはケメコさんで総監督に元GSスパイダースのリーダー田辺昭知 (現田邊昭知)氏が名を連ね国内ミュージシャンと一緒に国内での録音に成っています。歌詞は全曲ケメコさん、作曲も2〜5曲目以外の6曲はケメコさんに成っています。全体的にジャズ・フィーリングは無く、フュージョン系が少し入ったアーバン・ポップスといった感じでしょうか?日本ではバブル期突入期で今から思い返すと確かにこの様な都会的な「オシャレ」な音作りの曲が沢山有ったと思います。特に好きな曲は無いですが、聴き返して悪くはないです、それなりに時代を懐かしむBGM的な良さがあります。


WATCHING YOU MY ONE AND ONLY LOVE PERIGO A NOITE
WATCHING YOU
1985 CBS SONY 32DH 235

1. Watching You
2. Very Special Moment
3. Killing Me Softly With His Song
4. The Way We Were
5. We Can Fall In Love
6. Steppin' Outside Tonight
7. Looking For Love
8. This Masquerade
9. Everthing Must Change
MY ONE AND ONLY LOVE
1986  CBS SONY 32DH 351

1. My One And Only Love
2. Trav'lin' Light
3. 'S Wonderful
4. All The Way
5. Stella By Starlight
6. Lover Come Back To Me
7. My Romance
8. It Could Happen To You
9. 'Round Midnight
PERIGO A NOITE
1987 Eastworld - CT32-5020

1. Dancing In The Past
2. 憎いあいつ
3. めまい
4. 二人ぼっちのHeaven
5. Lover Boy
6. ベニスの五月
7. Sensual
8.S ee You Later
9. Congratulations
10. わかれ

 『KIMIKO KASAI』。1990年10月の発売で、45歳少し前の44歳時点、実質的にケメコさんのオリジナル・アルバムでは最後に成っている作品です。この年、Richard Rudolph 氏と正式に再婚、宝飾デザイナーとしての自身ブランド「kimiko by KIMIKO」を立ち上げています。(その後新作録音は無く`98年に正式引退を発表)
 プロデュースは Aaron Zigman バックは『WATCHING YOU』でプロデュースを担当していた Larry Williams が本来のホーン奏者としてサックスで参加、他にセッション・ギターリストの Michael Thompson らが担当しています。
 選曲は新古入っています。ブラック・コンテンポラリー系で "Feel Like Makin' Love" (Roberta Flack) "The Dock Of The Bay" (Otis Redding) "Moonlight Dancing" (the pointer sisters) "If We Try" (Babyface) が歌われています。
ソウル・ミュージック好きとしては "The Dock Of The Bay" くらいはオリジナルに近くとは思いましたがかなりアレンジされていました。ジャズ・スタンダードは "Someday My Prince Will Come 邦題:いつか王子様が"、"I've Got You Under My Skin 邦題:あなたはしっかり私のもの" の2曲、前者はマイルス・デイヴィスやビル・エバンス等インスト物が有名で歌物は珍しき Tanya Tucker 歌唱しか持っていません。後者はスタンダード・ソングとして多数の歌手が録音しています。わたしはペギー・リー、フランク・シナトラ、ジュリー・ロンドンヴァージョン等で親しんできました。前者は「白雪姫」を思い浮かべながら聴かなければイイです。後者はコール・ポーター風味は全くなく成っていますが、アレンジは妙に気に入りました、ケメコさんの声はやたら可愛く聞こえます、この歌い方で "いつか王子様が" を歌っていれば…と思いました。

KIMIKO KASAI
KIMIKO KASAI
1990 Kitty Records - KTCR-1008

1. Feel Like Makin' Love
2. Lady Brown
3. Someday My Prince Will Come
4. The Dock Of The Bay
5. Moonlight Dancing
6. Only A Heart
7. My Heart Still Waits For You
8. I've Got You Under My Skin
9. If We Try

BEST 物

 完全に音楽界から引退されたケメコさんの、編集物・ベストコレクション・アルバムを3枚。LP時代の`84年。その後10年ほどの`93年と出た物は既発アルバム収録物でした。そしてなんと2018年に出たベスト物はアルバム未収録のシングル用ヴァージョンや12インチEPヴァージョンが主に選ばれたものに成りました。既発曲中で選ばれた "やりかけの人生" は好きな曲ですので嬉しかったです。
すべてソニー・ミュージックが「CBS・ソニー」時代の音源ですが、他の会社では一作ずつしか発表していないので、合併でもしない限り、全時代を通じては無理の様です。

LOVE CONNECTION AS 〜SBM BEST SELECTION〜 GOLDEN☆BEST 〜SINGLES 1976-1984〜
LOVE CONNECTION
1984  CBS SONY 28AH 1436

A
1. We Can Fall In Love
2. This Masquerade
3. Very Special Moment
4. Vibration (Love Celebration)
B
1. Chain Reaction
2. Stardust
3. As
4. Everything Must Change
AS 〜SBM BEST SELECTION〜
1993 Sony Music SRCL-2585

1. Killing Me Softly With His Song
2. We Can Fall In Love
3. I Will Wait For You
4. As
5. Alfie
6. Way We Were,The
7. No Way, Not Me
8. This Masquerade
9. Stardust
10. Give Me Your Heart Tonight
11. Everything Must Change
12. Very Special Moment
GOLDEN☆BEST 〜SINGLES 1976-1984〜
 2018 GT Music MHCL-30492

1. We Can Fall In Love (Single Ver.)
2. Today, Tomorrow And More Than Yesterday
3. Love Celebration (Single Ver.)
4. Yarikake No Jinsei
5. And It All Goes 'Round And 'Round
  (Single Ver.)
6. The Rest Of My Life
7. Everything Must Change
8. Chain Reaction
9. As (Single Ver.)
10. I Thought It Was You (Single Ver.)
11. The Right Place (Single Ver.)
12. Love Is All We Need (Single Ver.)
13. No Way Not Me
14. The Things That We Do When We're Lonely
15. You Take My Breath Away (12" Ver.)
16. Give Me Your Heart Tonight (12" Ver.)

その他

 『THE MODERN PLAYING MATE』(世良譲モダン・プレイング・メイト)1968年にテイチクレコードからLP盤で発売されていた様ですが、CDで再発(通常ケース盤と紙ジャケ盤)されたケメコさんのソロ・デビュー前の録音。カバー写真に6人が参加していますが世良譲さんの若いことに驚きです。パーソネルは世良譲(p) 栗田八郎(b) ジミー竹内(ds) 川原正美(cga) 池田晴紀(bgo)笠井紀美子(vo)でケメコさんはシンガーではなくスキャット担当。声で意味のない言葉を選び並べてメロディーに乗せて発しています。実際は「タビダダルラー」と聞こえたりしています、ケメコさんの場合はラ行・タ行が多い様に感じますが、この経験が元でデビュー時に「ホーンライク唱法」と言われたのでしょうね。スキャットの参加は1,3,4,6,8の5曲でボサノバタイプの曲です。"Kemeko" は自身のニックネームをタイトルに冠したケメコさんのオリジナル。よってスキャットがメイン・テーマで進んでいます。

 『CUP NOODLE CM SONGS COLLECTION』、これはカップヌードルのCMソングばかりを集めたオムニバス・アルバム。その記念すべき第一作目がケメコさんとデューク・エイセスの "日清カップヌードル ハッピーじゃないか" だったということです。このCMソング、記憶になかったです。勿論カップヌードル発売期の頃の世相はそこそこ覚えていますが、そもそもカップヌードル自体に興味が無かったからかも知れません。`71年発売だとの事ですが、わたしは今までに30個〜40個程しか食べたことがなく (それもレギユラー・オリジナル麺のみ)、完全に袋麺派に成ります。ケメコさんとデューク・エイセスのコンビは他に、時計のSEIKOの腕時計CMで "色いきいき セイコー" という歌を録音しているとのことです。こちらは音源の発売はまだの様ですが出る可能性は?

 『ヘアピン・サーカス』(映画) これはケメコさんが映画に登場した二作のうちのひとつ (後は「囁きのジョー」) のDVD。[監督・西村潔、音楽・菊地雅章] ということで、映画は観ぬまま最初LP時代にオリジナル・サウンド・トラック盤 (菊地雅章六重奏団) を [Jazz盤] として購入しています、『黄金の腕』,『死刑台のエレベーター』や『アルフィー』のような演奏 (単独でジャズアルバムとして楽しめる) を期待していました 。
 今から思うと`70年代の日本のジャズ界の若手ミュージシャンはエレクトリック・ジャズを追及していた時期で`60年代風の [Jazz盤] を求めても無理が有ったのでしょう、いきなり電子ピアノが延々と続くテーマに期待外れな気持ちに成ったのを想い出します。
 ただ、この映画ケメコさんが出演していますし、原作が五木寛之さん(短編集「四月の海賊たち」の中の一編)ということでDVDが発売されると同時に購入しています。映画内で流れた菊地雅章氏の音楽はこの殺伐とした映画には結構ハマってはいました。彼は映像を見ながら演奏したのではなく、内容の趣旨を聞いて演奏したらしいです。
 その映画、若者のみが持っている [若さの特権とその裏にある幼稚さを伴う様な無謀な一面] といった部分を私は感じましたが、そのあたりの描写が鋭い五木寛之さんの原作、五木さんの小説は初期作品は好きで、「海を見ていたジョニー」「デラシネの旗」「さらばモスクワ愚連隊」「蒼ざめた馬を見よ」「涙の河をふり返れ」「狼のブルース」「こがね虫たちの夜」…etc. この頃の作品は読み漁りました。どれもがモダン・ジャズの世界に似合っていると感じました。
 この数年後米映画『タクシー・ドライバー』が公開、背景は違いますが、似たような都会の夜をテーマにした映画で
音楽は Bernard Herrmann 彼はジャズ・ミュージシャンではありませんが、ホーン楽器をうまく使いこなして見事に「都会の夜の虚しさ」な部分を表現していました。その時、『ヘアピン・サーカスのテーマ』に峰氏の「ソプラノ・サックスが入っていたならば…」と思ったこともありました。
 映画『ヘアピン・サーカス』、映画自体は全編無感情で淡々と進んでゆく夜の世界。見崎清志さんはレーサーで俳優じゃないので判りますが、江夏夕子(後に目黒祐樹さんの旦那)さんのセリフもぶっきらぼうなのは、役柄にハマっていました。セリフの大半がこの二人、ケメコさんを始め他のキャストのセリフはほんの少し。夜の高速道路でのゲームが主体のカー・アクションです。無機質で人情味の全く感じられない世界には 夜に光る点灯下での言葉少なめ映像はピッタリです。 見終わると、「映画を見たぁ〜」という独特の満腹感を味わえます。
 トヨタ2000GT、セリカ1600、サバンナRX-3(GT)、アルファロメオ1750など当時の若者達憧れの車種が登場、21世紀に成ってのクラシック・カー・ブームで、興行的には地味な映画ながらDVD化がされたと思います。この2020年にも再発された模様です。

THE MODERN PLAYING MATE CUP NOODLE CM SONGS COLLECTION
THE MODERN PLAYING MATE
(Yuzuru Sera Torio introducing Kimiko Kasai)
Original LP issued 1968
Reissued CD 1998
Re-mastered issued CD 2007
Think! / Teichiku Union TFC-1832

1. So Dance Samba
2. Autumn Leaves
3. Can't Get Over
4. Day By Day
5. Alice In Wonderland
6. The Shadow Of Your Smile
7. I Love Paris
8. Kemrko
9. Summertime
10. What'd I Say

CUP NOODLE CM SONGS COLLECTION
(Omunibus Album)
2006 Sony Music MHCL-947

1. 日清カップヌードル ハッピーじゃないか
(with Duke Aces)
ヘアピンサーカス
1972年公開映画(DVD Movie)
2009 King KIBF-626

原題 Highway Circuit
監督 西村潔
脚本 永原秀一
原作 五木寛之
音楽 菊地雅章
製作 東京映画 (配給:東宝)

出演 見崎清志
   江夏夕子
   戸部夕子
   笠井紀美子
   睦五郎
   佐藤文康
   舘信秀
   有山直樹
   田坂都

    
 

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