《 笠井 紀美子 》わたしが「生徒と呼ばれる世代」時からのめり込んで聴いていたのは洋楽です。邦楽系も聴いては居ました、好きな曲も沢山有ります。 ただ、「のめり込む」という表現は洋楽系にしかありませんでした。 シンガーやミュージシャンの事を記して来たのは外国の人たちばかりですが、彼女・ケメコさんのレパートリーは九割以上が英語歌詞でジャズやフュージョン系ですので、日本のシンガーですが、ジャズを良く聴いていた時期に聴き込んで居て、コンサートにも二度行った程です。初期の彼女は常にデニムジーンズのイメージでボーイッシュ、中性的な感覚も魅力のひとつでした。日本のシンガーですが是非とも想い出と共に記録を残しておこうと…。開始です。 〜70年代ケメコさんは1945年12月15日、京都市内で生誕。同志社高等学校を1年ほどで中退して歌手を目指し東京へ移られています。16歳 (本人談) で移住後、しばらくはサックス奏者の海老原 啓一郎&ロブスターズで修業しながら歌っていたとのこと。その後、世良譲氏の下で修業し(何故かレコードデビューは歌謡曲の「薔薇のいざない(なかにし礼, 村井邦彦作)」でしたが)、20代前半には既に国内・国産のジャズ・シンガーとしてトップに躍り出て大成功をおさめる迄に成っています。ジャズを歌うきっかけは 13歳頃に聴いたChris Connor の曲 ("All About Ronnie") だったとの事ですが、好んで聴いたのは Sarah Vaughan や Carmen McRae だったと云うことです・ただ、初期のシンガーとしての位置は Bev Kelly に似たホーン・ライクな唱法シンガーとの評価だったと記憶しています。 それはソロとしてのデビュー・アルバム『Just Friends』内の "Just in Time" 等を聴くと確かに的を得た評だと思えます。 コンボ内に溶け込んで発声される「声」を一種の管楽器として聴いても成り立つような感じですね、バックは大野雄二トリオでヤマハ・ホールでのライヴ録音盤です。(ベース・水橋孝、ドラムス・ 小原哲次郎) "Sunny" 、"By the Time I Get to Phoenix" を除くとジャズ・スタンダードとして多くのシンガーに歌われている曲が殆どですが、その2曲でもポピュラー畑とは違うジャズ化した歌唱です。 トップに選ばれた "There Will Never Be Another You" (Mack Gordon - Harry Warren 作) はインスト・オンリーもあり様々なスタイルで演奏・歌唱が行われていますがケメコさんのはデビュー盤収録らしくハツラツとしたアップテンポでスィングしたアレンジで気にっています。また、ケメコさんの好きなカーメン・マクレエでが歌った曲の収録も多いですが、クリス・コナーも歌った "Get Out of Town" (Cole Porter 作) も若々しくて良いです。わたしが最初に聴いたのは Anita O'Day でした。個人的には好きな曲が多く`70年代初期の彼女のアルバムの中でも特に好きなアルバムです。 セカンド『ONE FOR LADY』は丁度来日していた Mal Waldron との共演で彼女の名前が更に広まった好盤。マルが伴奏を務めていた Billie Holiday の楽曲ばかりを歌った物で確実に話題に成りそうな編集物です。その中で "Some Other Day" のみがマルがケメコさんの為に書いた曲。二作目にして比類のジャズ・シンガー、ビリーの歌集に挑んだのは流石のケメコさん。"Left Alone" はJackie McLean がビリーの代わりを務めて知れ渡り日本では超有名な人気曲。曲の良さも有り、気怠さを漂わした唱法がラストの締め括りで決めています。このラスと曲とトップの "Don't Explain" が良かったです。ベースは鈴木良雄、ドラムスが村上寛。数年後にはドラマーの村上寛氏とケメコさんは結婚していますが、後に離婚されています。ジャズ・ファンの間では「Lady Day」「Lady」とはビリー・ホリディの代名詞です。 ジャズ・シンガーの殆どの人がビリーの愛唱歌のうちいくつかを録音しています。個人的には ビリーの場合 Decca 時代の歌声が好きです。 三作目『YELLOW CARCASS IN THE BLUE』は Three Blind Mice という出来立ての国内ジャズ専門レーベルから発売されました。(他にも国内ミュージシャンを紹介するJazz専門レーベルに East Wind (伊藤八十八氏の設立) も有りましたが、 Three Blind Mice の方は、設立者のひとりにケメコさんも所属する「あいミュージック」の鯉沼利成氏もおられました) 。 Three Blind Mice では日野皓正さんや中本マリさんの盤を入手したことありますが、いつの間にか消えていてどうやら倒産してしまったというレーベルです。ケメコさんと峰厚介クァルテットの録音は他のレーベル用に録音しながらこちらから発売と云うことになった様です。 6曲中4曲がメンバー作で彼女のオリジナル曲も含まれていますが歌詞はすべて英語です。峰厚介のサキソフォン以下、ピアノが菊池雅洋、ベースが鈴木良雄、ドラムスが村上寛。 レコード盤両面のトップ曲がスタンダード曲、歌唱部分では Howard Dietz、Arthur Schwartz 作の "Alone Together" が好きですが他の曲では峰氏のソプラノ・サックスがイイ感じで響いています。
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80年代以降
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