Cold Blood

DISCOGRAPHY FROM MY COLLECTION
 アメリカ西海岸の音楽と言っても、ハリウッド映画を通じて早くからレコード会社が多数設立され、産業のひとつとして伸びていたロサンゼルスの音楽に比べて、サンフランシスコの音楽は『自由、寛大』といった市のイメージのままの部分をかなり持っていました。
 特徴を持ち始めたのは60年代後半、反戦者達が自由を求めてサンフランシスコに集まりだしたのがきっかけです。当時のサンフランシスコのミュージシャンとしてはヒッピーやサイケデリック・サウンドといった懐かしい言葉と共に、名を残したスコット・マッケンジー(「花のサンフランシスコ」)、グレイトフル・デッド、ジェファーソン・エアプレインなどを先ず想い出します。
 またジャニス・ジョップリンやスライ・ストーンがテキサスからやって来て、此処を拠点に演奏していたこともサンフランシスコの音楽を語るときに外す事は出来ません。ジャニスもスライもやっぱり、『サンフランシスコの顔』ですよね。
 70年代初頭、そのジャニス・ジョップリンとやたら比較されて過小評価の不遇に遭ったリディア・ペンス(Lydia Pense)率いるコールド・ブラッド(Cold Blood)とスライ&ファミリーストーンのベーシストだったラリー・グラハム(Larry Graham)が作ったグラハム・セントラル・ステーション(Graham Central Station)が先ず挙げたい、わたしの好きな、『アメリカ西海岸のバンド』です。

 Cold BloodはR&Bやソウル・ミュージックをベースにしたファンク・バンドといったイメージで紹介されることが多いですが、他のファンク系バンドと比較するとファンキーさは感じもしない程におとなしく、R&Bをベースにブラス(ホーン)サウンドを前面に出したロックバンドといった感じでしょうか。
 一般的な知名度はかなり低いながらもファンク系ミュージックファン達の間での人気は根強い物が有ります。
 1976年以降目立った活動もしなかったのに、突然90年に日本で二作がCD化されたり、21世紀に入ってからも本国で旧作がCD化されたり、昔のライブ盤が出されたりと地味ながらも聴き次がれて来ています。(2005年秋に29年ぶり新録新譜が出ました!)

 サンフランシスコ湾岸の都市・街などのうち、サンフランシスコ市の東対岸に位置するオークランド市、バークレー市、ピードモント市などは橋を渡ったサンフランシスコ市でサイケデリック・サウンド、フラワー・ミュージックが流行っていた時期でもR&Bやジャズ系の黒人音楽が好まれて演奏されていたようです。
コールド・ブラッドはヴォーカルのリディア・ペンスを軸にしたバンド。リディアのヴォーカルはソウル、R&B系での切れの良いリズム感とジャズ系のエモーショナルな唱法が上手くミックスされた当時としては個性的なスタイルのヴォーカルでした。
  ただ、60年代後半、同じ地域から不世出の女性ロックシンガーが二人も相次いで出たあとのデビュー。声や喉を自在に操れる天才ジャニスや大声量の迫力ヴォーカル、グレース・スリックと比較されて、声量の無さと線の細さを指摘し『バンドの顔として役不足』とまで評された文章も当時有りました。
まぁ、コールド・ブラッドというバンドをメージャーに出来なかったのですから、完全に外れては居ませんが、根強いファンが今も居るということは、細さを上回る魅力を持っていたという証ですね。
 コールド・ブラッドは60年代後半、ロックシーン伝説のプロモーターとまで言われるビル・グラハム(Bill Graham)に認められ、彼の設立したサンフランシスコ・レーベルのデビューバンドとして選ばれたのですから、当地での彼等の演奏力やリディアのヴォーカルは抜きでていたと思います。

 サンフランシスコ・レーベルから出たファーストとセカンドはR&B色とジャズ色が半々くらいでしょうか?個人的には丁度同じ時期に買ったウェイン・ショーターの"Super Nova"と想い出が重なり意外に都会的なホーンの音が耳に残っていますが、好きな曲は"I'm a Good Woman"というバーバラ・リンのR&Bカヴァーです。
 Repriseに移ってからの三作目『FIRST TASTE OF SIN (邦題:悪の極致)』の頃には同じベイ・エリア出身のタワー・オブ・パワーの人気と併行して少しずつ名も売れてきました。ダニー・ハサウェイがプロデュースをしている事もありニュー・ソウル的なサウンドで代表作に押す人が多いアルバムですが、歌も聴きたいというわたしの好みでは最も聴かなかった方のアルバムでした。
 その点、4作目の『THRILLER!』の方がスティーヴィー・ワンダーの"You Are the Sunshine of My Life"やビル・ウィザースの"Kissing My Love"など「聴く部分」は多いです。
 5作目『LYDIA』はスティーブ・クロッパーがプロデュース、LPA面曲はロサンゼルスで録音、B面曲はメンフィスで録音という作りに成っていました。(B面曲のホーンセクションはコールドブラッドのメンバーではなくメンフィスホーンズ)
このB面は全コールドブラッドのアルバムの中でも特に良く聴きましたのでわたしが代表作として押すのは勿論この5作目です。特に"Come Back Into My Life Again"は大好きな曲であちらこちらの自選カセットテープに詰め込んでいました。
 ABCに移籍しての6作目は70年代後半からブームに成ったディスコサウンドを意識した軽い曲も少し有りますが、『THRILLER!』に近い作りに成っています。

一応この6作目発表後、コールドブラッドは一旦解散、リディアだけが地元で時々歌っているという状態だったようです。そんな時期に『LIGHTES OUT』と題された2枚組LPが'77に出されましたが、サンフランシスコのFM局DJ,ヴォコとダスティが企画したアルバムでベイエリア・サウンドを広く紹介しようとベイエリア出身ミュージシャン達の協力の下、録音されたアルバムです。一曲だけリディアがタワー・オブ・パワーのメンバー達と演奏しています。(他はジョン・リー・フッカー、ニール・ショーン、ポインター・シスターズ等が参加しています。)

 以後、時代はアナログからデジタル、LPレコードからCDディスクの時代に成って、4作目と5作目がCD化された(それも日本が初)というのは嬉しかったですし、次々と続く期待もしましたが尻切れトンボ。またまた10年の歳月が必要でした。CD化されてもボーナス曲がつくほど未発表曲が残っていたことも無かったようですが、突然73年のライブ音源が2001年に出たのには驚きでした。
 リディアは地元でずっと歌い続けて居ましたし、コールドブラッド名義でも公演を幾度かしていたようです。過去の人には成っていなかったリディアです。29年ぶりの新作『TRANSFUSION』は飛び抜けた曲は無く、やはりメージャーな人気は得られないでしょうが、味わい深く嬉しい復活でした。
COLD BLOOD (1969)
USA San Francisco SD-200 (LP)

A
1. I Wish I Knew How It Would
   Feel to Be Free
2. If You Will
3. You Got Me Hummin'
B
1. I Just Want to Make Love to You
2. I'm a Good Woman
3. Let Me Down Easy
4. Watch Your Step
SISYPHUS (1970)
USA San Francisco SD-205 (LP)

A
1. Shop Talk
2. Funky on My Back
3. Your Good Thing
B
1. Understanding
2. I Can't Stay
3. Too Many People
FIRST TASTE OF SIN (1972)
USA Reprise MS-2074 (LP)

A
1. Visions
2. Lo and Behold
3. Down to the Bone
4. You Had to Know
B
1. My Lady Woman
2. No Way Home
3. Inside Your Soul
4. All My Honey
5. Valdez in the Country
THRILLER! (1973)
USA Reprise MS-2130 (LP)

A
1. Baby I Love You
2. You Are the Sunshine of My Life
3. Feel So Bad
B
1. Sleeping
2. Live Your Dream
3. I'll Be Long Gone
4. Kissing My Love
LYDIA (1974)
USA Warner Bros. BS-2806 (LP)

A
1. Ready to Live
2. Simple Love Life
3. Under Pressure
4. When My Love Hand Comes Down
5. When It's Over
B
1. Consideration
2. I Only Wanted Someone to Hear Me
3. You're Free Lovin' Me
4. Come Back Into My Life Again
5. Just Like Sunshine

LYDIA PENSE & COLD BLOOD (1976)
JAPAN ABC YX-8018-AB (LP)

A
1. We Came Down Here &
  Cold Blood Smokin'(Medley)
2. I Get off on You
3. Drink the Wine
4. I Got Happiness
5. Feel the Fire
B
1. Let Me Be the One
2. Back Here Again
3. I Love You More than You'll Ever Know
4. Blinded by Love
5. It Takes a Lot of Good Lovin'


LIGHTES OUT (1977)
JAPAN Blue Thumb YW-8017-18 (LP)

C
1. Dead
  
Tower of Power with Lydia Pense


THRILLER! (1990 original-1973)
JAPAN Reprise WPCP-3688 (CD)

1. Baby I Love You
2. You Are the Sunshine of My Life
3. Feel So Bad
4. Sleeping
5. Live Your Dream
6. I'll Be Long Gone
7. Kissing My Love
LYDIA (1990 original-1974)
JAPAN Reprise WPCP-3689 (CD)

1. Ready to Live
2. Simple Love Life
3. Under Pressure
4. When My Love Hand Comes Down
5. When It's Over
6. Consideration
7. I Only Wanted Someone to Hear Me
8. You're Free Lovin' Me
9. Come Back Into My Life Again
10. Just Like Sunshine
COLD BLOOD/SISYPHUS (2001 original-1969,71)
USA Collectables COL-CD-6813 (CD)

1. I Wish I Knew How It Would
   Feel to Be Free
2. If You Will
3. You Got Me Hummin'
4. I Just Want to Make Love to You
5. I'm a Good Woman
6. Let Me Down Easy
7. Watch Your Step
8. Shop Talk
9. Funky on My Back
10. Your Good Thing
11. Understanding
12. I Can't Stay
13. Too Many People


VINTAGE BLOOD: LIVE! 1973 (2001)
USA Dig Music DIG-104(CD)

1 Feel So Bad
2 Kissin' My Love
3 I Wish I Knew How It Would
  Feel to Be Free
4 Funky on My Back
5 You Got Me Hummin'

FIRST TASTE OF SIN (2002 original-1972)
USA Collectables COL-CD-6155 (CD)

1. Visions
2. Lo and Behold
3. Down to the Bone
4. You Had to Know
5. My Lady Woman
6. No Way Home
7. Inside Your Soul
8. All My Honey
9. Valdez in the Country


TRANSFUSION (2005)
USA Dig Music DIG-116(CD)


1. Face the Music
2. It's the Man That Makes the Clothes
3. It Could Be Me It Must Be You
4. Coming Back
5. Wait for You
6. Guide Me Home
7. Hooked on You
8. Down to My Last Heartache
9. Cool Drink
10. You Make Me Sweat
11. Will This Saga Ever End
12. Down to the Bone



BACK


© Photos of cover are copyright works by each art-designers.
Text by Mie